「フリーフォール」「通貨危機」「経済崩壊」ーー。これらは、1ドル=160円までの急激な円安を踏まえて投げかけられた警戒すべき言葉である。GDPの1%とも言われる為替介入が円安を食い止める以上の効果を上げられなかったことで、警戒感はさらに強まった。この原稿を書いている時点で円相場は1ドル=157.8円だ。

大きな危険は「金融クラッシュ」ではなく…

普段は冷静なエコノミストの1人で、日本に住んでいたこともあるノア・スミスは、ブログの読者にこう語った。 「日本の通貨はまだ暴落していない。日本の経済破綻は、日本国民を困窮させるだけでなく、世界経済の柱のひとつを揺るがすことになる...」。

2003年当時、日本が日本国債の大暴落の危機に瀕しているという話があったことを思い出す。もちろん、そのようなことは起こらなかったし、円にそのようなことが起こっている証拠もほとんどない。

より大きな危険は、突然の金融クラッシュではなく、日本の国際競争力と多くの国民の生活水準が腐食し続けることだ。

例えば、JPモルガンのチーフ株式ストラテジスト、西原里江氏によると、円安が157円より進んだ場合、その結果輸入物価が上昇し、今年の実質賃金の上昇分を帳消しにするほど全体のインフレ率が上昇する可能性があるという。2月の実質賃金(インフレ後)は23カ月連続で前年同月を下回った。消費者の購買力が下がり続けているのに、経済が成長するわけがない。