では、医師と何を話し合うかですが、

根拠に基づく医療でもっとも大切なのは、患者さんの価値観であり、その人の生活や人生の質(QOL)です。

治療なんだから科学的データ(エビデンス)が最優先でなはいの?と思われがちですが、それは誤解です。

治療が目的にならないように、自分の幸せをしっかり考える

もちろん、エビデンスは大切ですが、医療者の専門性(手術、診察法、チーム医療など)やエビデンスよりも、患者さんの生き方や考え方、希望と価値観が最優先事項です。

なぜなら、治療は患者さんとそのご家族が、がんとよりよく共存するためにあるからです。

この先、患者さんがよりよい人生を送るために治療するのであって、治療は手段の一つであっても、目的にはなりません。

もしも、人生を台無しにするような治療なら、本末転倒です。

しかし、がんの治療には、ともすればそうなる可能性があります。

だから、これから受ける治療で、自分が幸せになるかどうか、自分にとっての望みは何であるかを医師にしっかり伝えて、話し合っていただけたらと思います。

咽頭がんや喉頭がんで、声を仕事にしている方から手術で声帯を除くことがベストなのか、あるいはピアノなど楽器演奏が趣味の方に手や指がしびれる副作用がある抗がん剤を使うのが適切かどうかなど、よくよく考えなくてはなりません。

抗がん剤の種類もたくさんありますから、そうした副作用を避ける治療も可能になってきています。