「実は、診察時に痛風と聞いた瞬間、痛みが2倍くらいになったんです。帰りは歩くのもやっとでした。たらスパ熱はこの一件以来、急激に冷めてしまいました。飲み会ではウケるネタなので語り続けていますが、食事のバランスには気を付けているので、以後、発作は起こっていません」

総合診療医・菊池医師の見解は?

総合診療医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師は、「たらこも食べすぎれば痛風になることはある」と話す。

痛風は、体内に尿酸が蓄積され、結晶となって関節にたまるのが原因で発症する。

尿酸はプリン体という物質が分解されてできる老廃物。通常は尿とともに体外に排出されるが、何らかの理由で排泄が追いつかなくなると、関節にたまってしまう。

「尿酸の80%は体内から、20%は食事から作られます。正常な状態では尿酸の『作られる量』と『排泄される量』のバランスがとれていますが、鈴木さんのように、たらこなど、プリン体が多く含まれる食事を取りすぎると、体にたまって痛風が起こるのです」

1日あたりのプリン体摂取量は多くて400mgまで。

たらこに含まれるプリン体は100g(ひと腹分)あたり約120mgと、含有量が多い。ほかにもソーセージなどの加工品やカツオやマグロ、イワシなどの青魚、レバー、鶏のささみやももなどに多く含まれている。

なお、痛風の痛みが最も出やすいのは足の親指の付け根だが、足関節や足の甲、アキレス腱の付け根、ひざ関節や手関節にも出ることがある。「関節の中では酷使している部分には特に出やすい。鈴木さんの痛風がひざにも発症したのは、ランニングの影響もあると考えられます」(菊池医師)

また、「痛風が若者に起こらない」という理解は誤りだ。

菊池医師によれば、「高校生で発症した人は見たことがありませんが、20代、30代の患者さんはよく見る」という。「多くは会社員の男性です。肥満で『暴飲暴食』の自覚がある人がほとんどですね」。

尿酸値は7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」で、痛風のリスクが高まる。尿路結石や腎臓障害を引き起こすことがあるので、注意が必要だ。

高尿酸血症・痛風の予防は、「バランスのとれた食事をすること」「アルコールを適量にすること」「水分を多めに取ること」だ。食生活の改善が難しい人は、医療機関などで食事指導を受けたほうがいいそうだ。

本連載では、「『これくらい大丈夫』と思っていたら、実は大変だった」という病気の体験談を募集しています(プライバシーには配慮いたします)。「これはぜひ」という体験談をお持ちの方は、応募フォームからご応募ください。

著者:狩生 聖子,菊池 大和