4月には1グラム1万3105円と過去最高値を更新した金。金の投資商品を扱う三菱マテリアルの横山公成氏は「金への投資ニーズはますます高まっている」と話す。

【映像】森永康平氏に聞く「金はいつまで上がる?」

 「『インゴット』と呼ばれている金の現物、そして純金積立のニーズは共に好調だ」

 一般的に金の価格が上がるのは、世界の情勢が不安定になったときとされている。

 例えば、過去の相場を見てみると1979年のソ連のアフガニスタン侵攻、2008年のリーマンショック、直近ではロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな上昇傾向がみられた。

 そして、金価格に大きく影響するのが、アメリカの金利だ。

 「金利が高いときは普通に銀行に預けておく、もしくは債券を買うため金の価格はそのままか下がっていく。低金利の時は預貯金をしていてもしょうがないので別のどこかに資金を持っていく」(横山氏、以下同)

 しかし、ここ最近はアメリカの金利が高いにもかかわらず金の価格が上がり続けるという不可思議な状況が起きている。

 「これは『ミステリアスラリー』と言われてるもの。原因としてよく言われるのは、投資対象が限られている中国で不動産などのバブルが弾けたため、中国投資が金投資に集中し、高値にこだわらずそのまま買ったこと。また、別の要因としては“一番大きな投資家”である各国の中央銀行がここ数年に限らず大量の金を買っていることだ」

 金が根強い投資対象として選ばれる背景にあるのが、その希少性だ。現時点の採掘の技術力を考慮すると、今後16年ほどで新たに採れる金がなくなってしまう計算だという。そして、見た目の美しさだけではない“金ならではの魅力”があると横山さんは話す。

 「まず、耐久性・普遍性だ。金は王水でしか溶かすことができず、蒸発には2500度以上が必要であるため、火事が起きた際にも溶けるが残る。そして、錆びない・酸化しない。銀や銅は錆びてしまうためメッキなど被覆が必要だが金は酸化することなくいつまでもその外観は光沢があって綺麗だ」

 長期的にみると、価格は上がり続けていて、今後の更なるインフレに備えるためにも金の投資を検討する人も多いと思われるが…。

 「これからも右肩上がりには高くなる傾向にあると思っているがそれは直線的ではなくアップダウンがある。そのため低くなった時に買えばいいが、それは誰にもわからない。毎月もしくは毎日同じ金額だけ買って、(積立投資は)安い時に多く買えて高い時には少なく買うが、要するに高値買いしない。そんな買い方をしなければなかなか(上昇傾向の恩恵を)享受することは難しい」

 「ミステリアスラリー」について経済アナリストの森永康平氏は「金利が上がってくると金を持つよりはアメリカの債券が買われ、金の価格は下がる…というのが教科書的な話。だが今はアメリカの金利も金の価格も一緒に上がっている。これをミステリアスラリーと呼んでいるわけだが、参照している教科書が古いからであって、最新の社会情勢を考えると、それほど不自然なことではない」と説明する。

 「これまではアメリカが世界の警察でありリーダーであったが、だんだん新興国が強くなってたことでアメリカに対する依存を敬遠し、ドルから脱却を図ろうと考えるようになった。とはいえ、新興国の通貨はまだドルよりも信任がないため、それぞれの国の中央銀行が金を大量に買っている。今、世界にある金の鉱山から毎年産出されている新規の金の3割くらいは新興国の中央銀行が買っている。『俺たちはこれだけ金を持っているから、この国の通貨は信用できるだろう』とアピールしているのだ。ある意味、昔に戻っているといえる。ニクソンショックがあってから、今は金とドルは兌換できなくなったが、それより以前の、『金という裏づけがあるからドルを使ってほしい』と言っていた時代の新興国版を各国がやろうとしている。中国、インドだけでなく、トルコやポーランドなど様々な国の中央銀行がどんどん金を買っている。彼らは別に投資目的で買ってるいるわけではないため売らない。すると金が出回らなくなり、価格が上がるのだ」

 新興国の目論見は、どこまで奏功しているのか?

 森永氏は「今は金と兌換できるわけではないので、実質的には意味はないが、気持ち的には金をそれだけ持っているということが、1つの信頼になってしまっている」と説明。

 そのような中、今、金に投資することのメリットとリスクはどうなのだろうか?

 金への投資には「毎月定額の『純金積立』」「投資信託やETF(インデックス型同様に指数に連動)」「金貨や金地金(延べ棒)など現物を購入」などの方法がある。

 森永氏は「純金積立には価格変動を気にしなくていいというメリットがある。反対に投資信託やETFは株みたいな感覚で金の価格に連動するものを買うという手軽さがある。その中でも投資信託は1日1回しか価格が決まらないがETFはリアルタイムに動くので本当にリアルタイムに取引をしたい人には向いている。『現物』は手元に物があるため最も信頼性があるが、盗まれないように金庫を用意するなど保管するコストがかかる」と説明。

 森永氏は今後の金相場の動きについて「新興国の中央銀行の買いが続いているので、基本的には需給で見るとじわじわと上がり続ける可能性は相当高い。今後アメリカが利下げをしたり、中東で戦火が拡大したりなど、様々なことが起こり得るので価格はおそらく波打っていく。そのため、ギャンブル的に一気に投資するのではなく、タイミングを分散しながら投資資産の一部を金にあてるくらいがちょうどいいだろう」と見解を示した。
(『ABEMAヒルズ』より)