隠岐諸島に地域のまとまりが形成されていく6世紀から、対外関係で重視されるようになった9世紀にかけての隠岐の古代史をテーマとする企画展「誕生、隠岐国(おきのくに)」が、島根県立古代出雲歴史博物館(出雲市大社町杵築東)で開かれている。隠岐国が大陸や都の影響を絶えず受けながら成り立っていく道筋を資料126件でたどっている。

 同館によると、隠岐は外国に近く、日本の前線的な役割を担ってきたことや、都へ膨大な海産物を供給したことが、古代隠岐の歴史を特徴づけているという。

 隠岐は都の人々の食を支えてきた。今回展示している奈良文化財研究所所蔵の木簡には、隠岐から奈良へ海産物が運ばれたことが示されている。

 また高津久(たかつく)横穴墓群(知夫村)から出土した玉類は、北陸の翡翠(ひすい)の勾玉(まがたま)、出雲の碧玉(へきぎょく)の勾玉、日本列島外の赤メノウや碧玉の玉と、極めて広範囲から入手されており、隠岐の交流範囲の広さを物語っている。外浜遺跡(西ノ島町)で見つかった緑釉(りょくゆう)百合(ゆり)口瓶は中国で生産されたとみられ、海外とのつながりをうかがわせる。

 遍照院(隠岐の島町)旧蔵の天王立像は12世紀ごろの仏像だが、京都風の温和で洗練された作風で、当時の隠岐に高水準の仏教文化が栄えていたことを示しているという。

 久保田一郎・専門学芸員は「観光パンフレットに出てこないような隠岐の世界を伝えたい」と話す。19日まで。観覧料は一般700円、大学生400円、小中高生200円。問い合わせは同館(0853・53・8600)へ。(大村治郎)