琉球ゴールデンキングスの松脇圭志が調子を取り戻した。多くのファンにとっても待望の復活だったに違いない。

「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2023-24」の第1戦は、1年ぶりに横浜アリーナに帰ってきた琉球に軍配が上がった。27歳のシューティングガードは、チャンピオンシップ開幕以降の5試合で3ポイントシュート成功が10本中0本。千葉ジェッツとのセミファイナル第3戦でようやく1本目を決め、自身2度目となるファイナルの舞台に乗り込んだ。

 広島ドラゴンフライズとの初戦、松脇は8本中3本の3ポイントシュートを決めて勝利に貢献。第1クォーター終盤にコートインすると、残り1分1秒にファストブレイクの場面で1本目のシュートを3ポイントで沈めた。第2クォーターも序盤から迷わず3ポイントを放ち、11点差に追い上げられた最終クォーターには自身の長距離砲で再び広島を突き放した。

「今日はもらったら全部打つ気持ちでプレーしました。実際にシュートが入ったので良かったと思っています」

 約18分間のプレータイムで放った8本の3ポイントは、どれも迷いがなかった。復調のきっかけとなったのは、やはり千葉J戦で決めた1本が大きかったのか――。そうではないらしい。松脇は「あの試合で1本入ったことによって、ホッとした部分はありましたけど、そこでリズムをつかめたかどうかはちょっとわかんないです」と首を縦に振らなかった。本人はあくまで自然体で、いつもどおりを貫いた。たとえ不調であってもシュートを打ち続ける。「同じ気持ちでずっとプレーする」という意識は、この大舞台でも変わらない。

「(3ポイントを決めることができた要因は)特にはないですけど、チャンピオンシップでは本当にシュートが入らず、自分のリズムをつかめてなかったです。でも、そういったなかでも本数を打ったことでリズムをつかめたかなとは感じています」

 松脇の活躍にはともにセカンドユニットを担う牧隼利も「うれしかった」と話し、こう続けた。

「彼が決めてくれるとセカンドユニットの時間帯に勢いが出ますし、このシリーズはなかなかリズムに乗れてないかった松脇がシュートを決めたのはチームとしてもすごく良かったと思います」

 琉球は第2クォーターの失点をわずか9点に抑えて勝利を手繰り寄せた。同クォーター開始から約5分間にわたって広島を無得点に抑えたのが松脇や牧といったセカンドユニットであり、松脇はディフェンスに関しても手応えを口にした。

「最初からチーム全体のインテンシティが高かったので、その強度を下げないようにという意識でコートに立ちました。その部分では、満点まではいかないですけど、それなりにいいディフェンスができたかなと思います」

 松脇といえば、チャンピオンシップ初戦のアルバルク東京戦で印象的なシーンがある。同点で迎えたオーバータイム終盤、腰を強打して一時コートを退いたアレックス・カークに代わり、2本のフリースローを打った場面だ。

 結果的に2本とも決めることができなかった。しかし、松脇は笑っていた。見方を変えれば、勝敗を大きく左右する局面で“大役”を任されたことは、選手、シューターとしての価値を示す証でもある。

「あの時は笑うしかないという感じでしたね、後半もプレーしていなかったですし。でも、ガチガチの顔で打っていても同じ結果だったと思います。決めたかったですけど、なんか不思議な感覚でした」

 笑いながら答えたが、「次は決めきりたい」と松脇。連覇がかかる25日の第2戦も、松脇圭志は自分らしく、自然体を貫く。

文=小沼克年