「第19回ヴィクトリアマイル」(G1・12日・東京・芝1600メートル)は時に人馬にとって、初G1制覇の舞台になってきた。2007年コイウタは鞍上・松岡ともにG1初勝利。12年ホエールキャプチャや13年ヴィルシーナは3歳G1戦線での善戦止まりを乗り越えての初タイトル奪取だった。フィールシンパシーは鞍上の横山琉人騎手(21)=美浦・相沢=ともどもこれがG1初挑戦。初々しい初戴冠を目指す。

 徐々に力をつけてきた。3歳時は1月のフェアリーS4着から3戦連続でクラシック戦線に挑戦するも、大舞台への切符をつかめずに秋は自己条件から再スタート。4歳のほぼ1年間を3勝クラス卒業に費やして、秋の東京でようやく勝ち上がり。暮れのターコイズS2着でやっと重賞実績をつくり、5歳春は福島牝馬Sの2着で賞金上積み。G1挑戦できるレベルまで引き上げた。

 小島師は近況の成長ぶりに目を細める。「ターコイズSの後、牡馬を相手にして少し壁(ニューイヤーS9着)は感じたんだけど、その後に充実してきたね。前走は少し不利な条件でも闘えて、あれだけできたことを考えると、楽しみがある」。3勝クラスを勝ち上がった紅葉S以来、前めでの立ち回りが板について、しぶとく粘れるようになった。

 ここまでキャリア19戦。うち17戦の手綱を取る横山琉がここでもコンビ継続だ。鞍上にとってはこれがG1初騎乗になる。トレーナーも存分の働きに期待を寄せている。「ジョッキーもずっとこれを目標にやってきて、そうして乗せてもらえるわけだからね。今年は全然勝っていなくて(3勝)、危機感も持っていたようだけれど。何でもかんでも乗せてあげられるわけではないからね」。地道な積み重ねの先には、きっと若武者にもご褒美が待っている。

 残すは最後の仕上げのみ。「先週までは感じよく来ている。メンバーはちょっと強くなるけれど、もくろみ通り、上がってくるかどうかだね。前走までお釣りを残しながらやってきたから、ふたを開けてみたらという楽しみはあるよ」。重賞勝ちもまだない人馬だが、もう一段の上積みで一気に頂点をうかがう構えだ。