生活に欠かせないものの相次ぐ値上げに、頭を悩ませる人が少なくありません。とくに食品は、家計を直撃することも。特売などで安いときに購入し、上手に活用したい人も多いでしょう。そこで、冷凍食品メーカー・株式会社ニチレイフーズ広報部マネージャーの笹嶺舞依子さんに、家庭でできる食材の冷凍について取材。まずは、天候などで価格変動が大きい野菜についてポイントをお聞きしました。

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基本は急速冷凍&空気に触れさせないことが大切

――野菜などを大量に購入した際、家庭で冷凍保存するメリットやデメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。

「旬の食材が安く手に入ることもありますが、この冬の白菜など、野菜の種類によっては新鮮なうちに食べ切るのが難しいご家庭も多いはず。そんなときは食材を無駄なく、使用したい量を、食べたいタイミングで調理できる冷凍保存がおすすめです。まず冷凍とは、食品中の水分を凍結させること。冷凍保存によって、保存料を使わずに食材や食品の劣化を防ぎ、無駄なく使い切ることができます。

 ただし、凍る過程で水が氷結晶となって食品の細胞壁が破壊されるため、解凍したときに旨味成分が流出したり、食感が変わったりすることも……。そうした特徴から、冷凍することでキノコは旨味を感じやすくなり、タマネギなどは火の通りが早くなるなど利点もあります。逆にデメリットを最小限に抑えるには、『急速冷凍して氷結晶が大きくなる前に凍らせる』『食材の乾燥&酸化を防ぐ』ことが大切です」

――家庭で冷凍保存をするのに向いている食材、向いていない野菜はありますか?

「一概にはいえませんが、水分の多い野菜や根菜は工夫が必要です。トマトやレタスなど水分が多い野菜は、凍結時に氷の結晶が大きくなるため食感が変化します。ニンジンや大根、ゴボウなど繊維質の野菜は、解凍時に組織が空洞化し、筋っぽい感じが強くなることも。

 ただ、どれも工夫しだいで冷凍は可能です。トマトは丸のまま冷凍して加熱調理に使う、ニンジンは3〜5ミリ角程度のブロック状や千切りにしてから冷凍するなど、食材に合わせて冷凍や解凍、調理を行えば問題ありません」

――家庭での冷凍ストックで、意識すべき点はありますか?

「冷凍食品はマイナス30度以下の急速凍結で作られていますが、家庭で冷凍する際はマイナス18度ほどの緩慢凍結になってしまいます。そのため、家庭では『なるべく早く凍らせる』『しっかり包む』『衛生的に取り扱う』『早めに使い切る(2〜3週間以内)』を意識してください」

急速冷凍機能があれば積極活用 アルミのバットやアルミホイルも効果的

――野菜を冷凍する際のコツやポイントを教えてください。

「まずは、基本ポイント4つを押さえましょう」

1. 食材を薄く平らにし、効率良く急速冷凍
 薄く広げれば短時間で食材が凍り、細胞壁破壊が最小限にできます。解凍も早くなり、使う分だけ手で折って使えて便利です。

2. 金属を使って、時間短縮
 アルミなど熱伝導の良い金属製のバット上で冷凍すると、時間が短縮できます。道具がない場合は、ラップの上からアルミホイルで包むのも効果的です。

3. 空気を遮断し、食材を乾燥から守る
 冷凍庫内は乾燥しています。ラップや冷凍用保存袋を活用し、なるべく真空状態にするなど、食材から水分が蒸発することを防ぐと良いでしょう。

4. 粗熱を取り、水気を拭き取って霜を防止
 熱いまま、あるいは水滴がついたまま冷凍すると結露で霜ができ、ほかの食材の劣化にもつながります。野菜の水気をしっかり拭いてから、冷凍するようにしてください。

――野菜を冷凍することで「時短」かつ「おいしく」なるような、おすすめの食材はありますか?

「時短でいえば、『タマネギの冷凍保存』がおすすめです。タマネギの皮をむき、くし切りやみじん切り、薄切りなど使いやすい大きさにカットし、冷凍用保存袋に平らになるように入れたら、空気を抜いて冷凍するだけ。使う分だけ手で折って取り出せるうえに、冷凍することで火の通りが良くなります。

 ポイントを活用し、野菜をよく使う状態にカットして冷凍ストックしておくと、それだけで調理の手間をかなり省けて便利です。とくに加熱して使う野菜は、基本的に解凍せずに調理可能なので、休日にまとめ買いしたときに冷凍ストックすると、平日の夕飯の準備が手早くできるようになりますよ」

 長く保存できて、おいしく時短調理できるのは、忙しいときに助かりますね。次回は、肉や魚の冷凍ストックのポイントを紹介。さらに調理が楽になる、下味冷凍についても教えてもらいます。

Hint-Pot編集部