「忘れ物をしない」の欄に、小学校6年間で18回「△」(つまりバツ)のスタンプを押されていた筆者。「子どもらしいね」では通らなくなった年齢を迎えてからは、「システム手帳」と呼ばれる分厚いリフィルタイプの手帳を持ち歩いていました。

 予定をはじめさまざまな情報を書き込めることや、手書きすることで記憶が定着するのは良いのですが、かさばりますし、毎年使用済みリフィルが溜まっていきます。また、使っていた頃は家に置き忘れてしまうと予定の調べようがないという課題も感じていました。

 スマートフォンの良いところは、クラウド上にスケジュールを保管するのでいずれかのスマートフォンを持っていれば情報にアクセスできること、検索しやすいことなどが挙げられます。記憶に定着させるアナログとかさばらずどの端末でも確認できるデジタルのいいとこ取りをできないものか……。というわけで、デジアナ文具にたどり着きました。

●デジアナ文具とは?

 デジアナ文具の明確な定義はありません。手書きというアナログの良さに、検索性や保存性の高さなどデジタルの良さを融合させた文房具がこれに当てはまると考えられています。

 記録方式には、ノートに印刷されたパターンを読み取る専用ノートの必要なものや、センサーの組み込まれた“クリップボード”上に好みのノートを置いて筆記することで筆跡を記録するものなどがありますし、保存形式も手書きした筆跡をスキャンしたようにデータとして保存できるもの、保存して色を塗ったり筆跡を削除したりして編集できるもの、手書き文字をテキスト化できるものなど種類はさまざまです。

  筆者が現在愛用しているのはNeoLABの「Neo smartpen」(ネオスマートペン)シリーズ。専用ノートのページに印刷されている独自パターンをペン先近くに搭載したセンサーで読み取り、それを座標として筆跡(運筆)を記録していくタイプのデジアナ文具です。

 データを取り込むための専用スマホアプリ「Neo Studio 2022」が用意されており、スマホと連携させていない場合は書いたものを本体に保存します。スマホと連携させれば筆跡をそのまま保存してPDFや画像に変換可能。テキスト変換すれば、コピペして再利用することも容易です。

 まさに、アナログとデジタルのいいとこ取りできるアイテムなのです。

 Neo smartpenシリーズには、初代の「N2」からはじまり、「M1+」、文具好き向け「LAMY safari all black ncode」機能を制限し低価格化した「dimo」、そして待望のゲルインキタイプ「A1」があります。

 専用ノート(Nノート)には、リングタイプ、パッドタイプ、ハードカバーなどの他、スケジュール帳「N planner」があります。

 今回は、ゲルインキタイプの「Neo smartpen A1」(以下、A1)とリングタイプの「N ring notebook」(以下、notebook)、そして「N planner」で何ができるのかを見ていきましょう。

●スラスラ書けるゲルインキ

 筆者が所有している他のデジアナ文具の専用ボールペンもそうなのですが、Neo smartpenシリーズでも採用しているインクは油性タイプでした。裏写りしにくいメリットがある反面、筆記が重い、筆記中にインク溜まりができるといったプチストレスがあります。

 ユーザーからの声があったのかどうか定かではありませんが、サラサラと書けるゲルインキタイプのNeo smartpenが登場しました。それがA1です。

 インクがゲルタイプに変わったことの他、電源をオンにする方法が変更されました。これまでのものはキャップを外せば電源が入っていましたが、A1ではグリップを少し強めに握ることで電源が入る仕様に。また、充電端子がUSB Micro-BからUSB Type-Cへと変わったのも地味にうれしいポイントです。

 では、性能はどうでしょうか。notebookに書いたものをアプリで取り込んでみたものがこちらです。

 Neo Studio 2022アプリには、手書き文字をテキスト変換する機能を搭載しています。これには2種類あり、1つはプレーンテキストに変換するもの、もう1つは紙面の状態を保ったまま描いた位置にテキスト化したものを挿入していくというものです。

 いずれもテキスト変換したいページを開いてからメニュー(縦に点が3つ並んだボタン)をタップし、「テキスト変換」または「スマートテキスト変換」をタップして行ないます。

 なお、テキスト変換とスマートテキスト変換では、精度に差が生まれてしまいます。今回書いた文字はハート記号も含め158文字でしたが、テキスト変換では95.6%、スマートテキスト変換では91.8%の精度となりました。

●最新デジアナ文具はスケジュール管理もできる

 手書き文字を再利用しやすいテキストへ変換する機能を持つデジアナ文具は、コクヨ「CamiApp S」(2014年8月発売)など以前からあるため目新しくはないでしょう。

 しかし、最新のデジアナ文具はそれ“だけ”では終わりません。なんと専用のスケジュール帳に書き込んだものをGoogleやOutlook、iCalendarなどに反映できるのです。

 それが、NeoLABの「N planner」と「N planner slim」シリーズです。前者はハードカバータイプのMOLESKINEノートのような見た目、後者は必要最低限の紙面を用意した全96ページのスケジュール帳です。

 N plannerには、月間スケジュールと週間スケジュールのページがあります。

 例えば、終日の予定、または時間の決まっていない複数の予定を月間スケジュールに、開始時刻の決まったものは週間スケジュールに書き込んでいくという使い方ができるでしょう。また、そのほうが現実的です。

 というのも、N plannerの月間スケジュールページでスケジュール開始時刻を入れるには、「2-4PM」や「9AM-3PM」など独自ルールを守った記述が必要だからです。これには相当な慣れが必要です。

 週間スケジュールであれば、該当する時刻の欄に予定を書いていくだけなのでストレスがありません。数時間にわたるものであれば、必要な長さの線を引いて「ここからここまで」を指定できます。

 月間スケジュールページと週間スケジュールページに予定を書き込むと、同じ名前の予定がクラウドカレンダーにアップされてしまいます。気になるなら、片方の予定を削除すれば良いでしょう。重要なのは、「書いた」という記憶と、それに基づいてカレンダーを見るという行為なのですから。

 N plannerにはオマケ機能もあります。月間スケジュールページの日付の肩部分にあるカレンダーと右向き矢印を組み合わせたアイコンをNeo smartpenでタッチすると、手書きのまま画像としてシェアできる「クリッピングシェア」機能です。

 一緒に旅行する仲間や、帰省先の実家の誰かに画像でスケジュールを共有すれば、楽しみにしているという気持ちを伝えられるでしょう。

 今やiPadのApple Pencilや、Galaxy Sペンシリーズなど、書くところから保存まですべてデジタルで行なえる時代となりました。筆者は忘れっぽいことから手書きしますが、文具が好きだから、ペンと紙の体験に勝るものはないと思うから、など手書きしたいという動機はさまざまです。

 手書きしたものをテキストデータとしても画像としても保存でき、スケジュールの同期も行える最近のデジアナ文具。手書き派にはぜひ試してもらいたいジャンルのアイテムです。