ここまでの話をまとめると、「市場原理に沿っている」ということを保ち続けることが、再現性をもって高い成果をあげ続ける秘訣であるということが、私がキーエンスから学んだことです。
そして市場原理に経済原則、つまり「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」という「経世済民」をベースとして、「営業」「販売促進」「商品企画」「開発」がどう振る舞うべきかが決まっているのです。
すると不思議なことに、組織図はきれいなひし型になります。
営業は、ニーズを「ニーズの裏のニーズ」レベルまで探索し、商品の提供による解決を目指します。
販売促進は、ニーズから生まれた商品を横展開できないかと考えます。
商品企画は、営業が向き合っていた範囲に加えて、自身でも顧客の潜在ニーズを探り、シーズや理想も意識します。
開発はシーズをメインとした向き合い方になります。
向き合い方はそれぞれですが、これらはすべて一つの図に収まっています。
つまり、経済原則に沿ったうえで、全体のシステムを支えるための役割を「営業」「販売促進」「商品企画」「開発」の全員で担っているのです。
私が在籍していたときも、そして現在でも、40年以上前からキーエンスの組織としての考え方は変わっていないと聞いています。
もちろん事業部は増えています。もともとは1、2事業部しかなかったのですが、現在では、9事業部まで増えているそうです。
しかし、9事業部とも同じように市場のニーズの方向を向いています。
つまり、変化はあれど、一つひとつの事業部、そして組織全体が「市場原理に対してこれが最適だ」という構造を40年以上も続けているのです。
それほどの期間で同じ構造を保ち続けられるということは、経済原則にぴったりと沿っていることの証明と言えるでしょう。
そしてまた、人事制度も市場原理と経済原則に沿って考えていく必要があります。
まとめになりますが、市場のニーズを叶えるということを源泉として、組織体を組み上げ、最適化し続けることこそが、卓越した成果をあげ続ける秘訣なのです。
【まとめ4-4】
「市場のために組織がある」という思想を組織に浸透させることを徹底する。
<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは?
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?
■第6回 “卓越した成果”を再現し続ける組織は、なぜ「ひし型」になるのか?(本稿)
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(田尻 望)