新宿駅西口で、大規模な再開発工事がいよいよ本格化しています。地上から地下ロータリーにつなぐ「ループ通路」も、この再開発の際に廃止となるといいます。西口は将来どうなっていくのでしょうか。

西口に空いた「ぽっかり穴」と謎のループ道路

 新宿駅西口で、大規模な再開発工事がいよいよ本格化しています。
  
 目まぐるしく変わっていく駅前風景の中で、昭和時代から残る、新宿駅西口の「象徴的存在」も無くなっていきそうです。

 2024年3月25日、閉鎖された新宿駅西口の旧小田急百貨店の駅ビルが、すっかり解体され、いよいよ「新宿駅西口地区開発計画」としての新築着工を迎えました。

 そして6月6日、この開発計画は国によって「民間都市再生事業計画」に認定。各種の特例措置が認められ、いよいよ開発が本格化していきます。

 旧小田急百貨店の跡地には、地上48階建ての超高層ビルが誕生することになります。2029年度に完成する予定です。10階までは商業施設が中心で、そこから上はオフィステナント、最上部には展望施設が設けられる計画です。

 旧小田急百貨店だけでなく、新宿駅西口は面的に空間再構築が行われていきます。最大の変化は、西口と東口をつなぎ、今まで存在しなかった「JR上空をまたぐ空中東西通路」が誕生することです。

 このデッキは西口の広場につながり、街の新たな玄関口になる予定です。

 さて、その新西口広場を整備するため、西口にあった「人もクルマも通れない部分」を、大々的に解体していくことになります。

 思えば、新宿駅西口は、広い地上空間がある割には、その「人もクルマも通れない部分」がやたらとあり、うまく空間を活用できていないものでした。

 具体的には、バスのりば周辺に広がる緑地帯や、地下街の排気ダクト施設、そして一番の存在感を放つのが、地下タクシーロータリーへつながる「ループ通路」でした。

 このループ通路、入口と出口で別々で、左右対称の「ダブルループ」構造になっています。このループはさらに一段深いところまでループしていて、新宿駅西口地下駐車場に直結しています。

 地下ロータリーは、都庁前からトンネルで東進して駅までつながっていますが、このループのおかげで地上の西口へ直接出入りすることが可能になっています。

 ループ部は広大な「吹き抜け」となっていて、JR・小田急の地下改札を出て西口へ出ると、日光が降り注ぎ、まるでそこが地上1階だと錯覚しそうになるくらい、明るくなっています。

 都庁方面へ行くにはかならず目にするこの「ループ」が、再開発で廃止される計画になっています。先述のとおり「西口広場」の歩行者空間を確保するためです。

 それでは、西口の地上部は「すべて地面」になってしまうのかというと、実はそうではないようです。

西口の「穴」には大きな意味があった!設計者の思いとは

 確かにループ通路は無くなりますが、「地上と地下ロータリーをつなぐ穴」は残される方針になっているのです。

 この「新宿駅西口の穴」には、深い意味があります。1966年に誕生したこのロータリーを設計したのは、建築家である坂倉準三氏。坂倉建築研究所の説明では、設計コンセプトとして「地下駐車場に導く螺旋状の斜路とともに設けた吹抜け空間は、多くの人が行き来する地下広場に光と風を導く」としています。

 再開発にあたって坂倉氏は、2017年に以下のようなコメントを発表。この「ボイド(穴)」に対する思いを語っています。

「地下1階は西口における最も重要な広場として、地下1階中央上部を大きく開口させ、地下1階歩道にまで、自然光線を取り入れ、地上広場との空間的つながりを得、地上地下一体となった有機的かつ『自然』な駅前広場の計画がなされなければならない

 西口広場がこれから先もさらに生き生きと使い続けられていくためには、今後の改修改造に際しては、この広場の本質を決めることになった地下空間の地上化の意味について改めて思い起こすよう望みたい」

 東京都はこの設計思想を尊重し、西口広場にこの「ボイド」を残す方針にしたといいます。

 まだ詳細設計は公表されていません。まずは旧小田急百貨店側の工区から順番に工事が進められていきます。ループ道路の部分もまだ着工は先になりそうで、しばらく「昭和の香り」残るこの風景を惜しむことができそうです。

 なお、このループ部に現在、足場が大々的に架けられていますが、これはループ部を解体するものではないと、東京都は説明します。デッキ部周辺の工事のため、仮設の工事用スロープが設けられるため、そのための足場だといいます。