昨今登場した「退職代行サービス」というものをご存じですか? SNSでも話題となっていますが、従業員に代わって会社に対し退職の意思表示をする事業者を指します。この業者について無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが詳しく説明しています。

退職代行サービス

ゴールデンウィークがあけてから、事業主からの「退職代行業者から、従業員の退職について通知が届いたが、どうしたらよいか?」といったご相談を受けることが増えました。

退職代行業者とは、従業員に代わって、会社に対し、退職の意思表示をする事業者をいいます。しかし、この“退職代行業者”には、違法あるいはグレーな事業活動を行っている事業者も多くいます。

弁護士法72条で、弁護士や弁護士法人以外が、報酬を得る目的で、法律事務を行うことを“非弁行為”として禁止しています。

違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑に処せられます。

退職代行業者が、会社に対して従業員の退職の意思表示を代行することや退職条件について交渉することは弁護士法72条違反(非弁行為)となります。

退職代行業者にできるのは、従業員の伝言者(要は、つかいっぱしり)として、従業員が退職を希望していることを会社に伝えることだけです。要求や交渉はできません。

また、最近は、退職代行業者が弁護士と提携していることがありますが、弁護士が非弁活動を行う者と結託することは禁止されています。

弁護士や弁護士法人が、非弁活動を行う者に自己の名義を利用させることも、弁護士法で禁止されています。

ですから、弁護士または弁護士法人自らが退職代行を行わない限り、退職代行サービスは、単なる“つかいっぱしり”が行う何ら法的効力のないものか、あるいは非弁行為として違法・無効となるものです。

そして、そのような者から従業員の退職の申し出があっても、それは正式な退職の申し出とは認められず、そんな申し出に応じる必要はありません。

もし御社に、弁護士あるいは弁護士法人以外の退職代行者から、従業員の退職について通知等が届いても、原則、相手にせず、従業員本人と直接、話すべきです。

ちなみに、会社が違法な退職代行業者と退職に関する事項について合意しても、それは無効となります。

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