FSCとLCCの中間
かつて日本の航空会社といえば、JALとANAだった。しかし近年、「MCC」が人気を集めている。
MCCとは、
・Middle(ミドルア)
・Cost(コスト)
・Carrier(キャリア)
の略で、中堅航空会社を指す。その名のとおり、JALやANAのようなフルサービスキャリア(FSC)と、格安航空会社と呼ばれるローコストキャリア(LCC)のちょうど中間に位置している。
ただ実際には、FSCと同等のサービスを提供し、運賃はFSCとLCCの中間で、コストパフォーマンスが高い。
代表的な4社
MMCが日本に進出したのは1988(昭和63)年のことである。それまで寡占状態だった空が規制緩和された翌年である。MCCの多くは地域に根差した航空会社であり、独自のサービスを展開している。日本の代表的なMCCは次の4社である。
●スターフライヤー(福岡県北九州市)
北九州空港を拠点としている。コーポレートカラーの“黒”を使った機体、皮張りシートが印象的だ。座席はJALやANAよりも広い。ドリンクサービスでは、タリーズコーヒーやチョコレートが提供され、こだわりが感じられる。
●ソラシドエア(宮崎県宮崎市)
宮崎空港、羽田空港、那覇空港を拠点としている。長崎県産のアゴ(トビウオ)の出汁と大分県産の柚子を使ったソラシドエア名物「アゴユズスープ」は好評だ。また、地元企業とのコラボレーションによる機内販売など、地域貢献にも積極的である。
●エア・ドゥ(北海道札幌市)
新千歳空港と羽田空港を拠点としている。“道民の翼”としても知られ、北海道産のドリンクや食材を使った軽食サービスを提供している。マスコットキャラクター「ベア・ドゥ」には根強いファンがいる。化粧室には北海道産ラベンダーのポプリが置かれるなど、細部に北海道を感じさせる。
●スカイマーク(東京都大田区)
羽田空港と神戸空港を拠点としている。MMCのなかでは最も運賃が安く、価格競争力もある。鹿児島⇔奄美大島、那覇⇔宮古(下地島)を除く全路線で3種類のフリードリンクサービスを提供している。100円スナックもある。
具体的な優位性
2023年度に発表された指標は次のとおりである。
・顧客満足度第1位:スカイマーク、スターフライヤー
・感動指数1位:スターフライヤー
・定時運航率1〜3位:スカイマーク、スターフライヤー、ソラシドエア
前述のとおり、長い間、“日本の空”といえばJAL・ANAだったが、MCCは、FSCのJALやANAを上回るほどのサービスを展開し、世間から高い評価を得ている。
定時運航率で毎年1位を獲得しているスカイマークは、機材繰りを工夫することで定時運航を実現している。同じ機材を使用することで、予備機として常に数機を待機させ、遅延時に割り当てているのだ。このような定時運航率の高さが顧客満足度につながっているといえる。
また、LCCと比較した場合、高い優位性がある。LCCが
・ドリンクサービス
・受託手荷物
・座席指定
を有料としているのに対し、MCCは一部の飲食サービスを除き、これらのサービスをすべて無料で提供している。
次に関東圏の発着空港を見ると、MCCは羽田空港発着、LCCはすべて成田空港発着となっている。運賃の差はあるものの、成田空港までの電車代を考慮すると、全体的な価格差はかなり小さくなる。
さらに注目すべきは運賃である。次は、運賃が同水準になる場合の例である。
・MMCで、キャンペーンを活用した場合
・LCCで、オプションを付けた場合(座席指定・受託手荷物など)
通常運賃だけで比較するとLCCに軍配が上がるが、総合的に見ると、価格面で劣るわけではなく優位性が高い。
世間の流れに迅速対応
MCCの特徴のひとつは、世間の動きに合わせていち早く新サービスを開発してきたことだ。
スターフライヤーは、ペットと一緒に飛行機に乗りたいという声に応え、一部路線で実施していたペット同伴サービスを全路線全便に拡大した。
エア・ドゥは、就職活動が長期化する流れを受けて、就職活動中の学生を対象に通年で運賃割引を実施すると発表した。
世間の流れを察知し、時代に合ったサービスを提供する航空会社が、今後支持されていく。多様化によりさまざまなニーズが高まる現代において、MCCへの期待はますます高まっている。
その魅力は、費用対効果だけではない奥深さがあるようだ。