食品や商品を一つずつ包んだり、それらを段ボールに詰めたりする包装関連機械。個包装の分野は日本国内では食品向けが多く、人口減少による市場縮小から海外市場に目を向ける動きもある。一方、日本国内の生産現場では人手不足による自動化ニーズは底堅い。そのほかにも環境対応や働き方の改善など、包装機械メーカー各社は顧客の課題解決に向けた新たな製品・サービスを展開している。(編集委員・江刈内雅史、名古屋・津島はるか)

ライン全体の自動化提案

包装機械及び荷造機械(手動のものを除く)の販売金額と台数

経済産業省がまとめた生産動態統計によると、包装機械および荷造機械の販売金額は2020年以降はコロナ禍の影響で3年連続で減少傾向が続いたものの、23年は4期ぶりに増加に転じて2028億円と2000億円を超えるまで回復した。中でも、コロナ禍を背景に拡大した電子商取引(EC)需要により、段ボールに商品を詰めるための装置などの外装・荷造機械の販売金額は右肩上がりだ。

国内市場では縮小傾向が続いているが、中部包装食品機械工業会の生田涌希会長(フジキカイ社長)は「人手不足の課題が顕在化してきており、幅広い工程の自動化や人が入れ替わっても動かせる装置が求められている」と潜在性を分析。業界全体として包装機械単体で一つの工程を自動化するだけでなく、搬送装置やロボットまで組み込んだ自動化ラインの全体提案まで幅を広げる企業も増えてきている。

ブラザー 段ボールに印字、ラベル不要でコスト10分の1

段ボールへの印刷面から、包装コストを合理化する仕掛けを売り込んでいるのは、ブラザーインダストリアルプリンティング(東京都大田区、奥山晴美社長)。ブラザー工業のグループ企業である同社は、同じくブラザーグループ傘下の英ドミノが製造する産業用プリンターの国内販売をしている。そのドミノ製プリンターに、段ボールへの製品情報の印刷をさせれば、製品ごとに段ボールにラベルを貼付する必要をなくせるという。

ドミノのピエゾ式インクジェットプリンター「Cx350i」は、プリントヘッドの印字高さが65ミリメートル。4台接続すれば最大260ミリメートルもの高さの印字にも対応する。大きな文字やロゴから小さな文字、2次元コードの印字も可能だ。製品の包装ラインのベルトコンベヤーにCx350iのプリントヘッドを組み込めば、コンベヤー上を流れる段ボールの側面にロゴや製品情報を印刷できるようになる。「段ボールをきれいに見せるためにラベルを貼るところに、このプリンターであればきれいに印字ができるので、『こちらに変えませんか』と提案している」(ブラザーインダストリアルプリンティング企画チーム)。コストはラベル貼りに比べて10分の1程度で済むという。

フジキカイ コンベヤーいらず、保持幅自在・充填容易に

一方、全く新しい包装の仕組みを展開するのは包装機械メーカーのフジキカイ(名古屋市中村区、生田涌希社長)。同社が提案する「リニア搬送包装システム」は、ベルトコンベヤーやチェーンを使わないため、製品保持の幅を自由に切り替えられる。パウチや箱を保持した状態で左右の幅を狭めれば投入口を広げることができ、充填しやすい。自由に幅を変えられるため、一連のシステムの中でサイズの異なる複数の包装作業も可能だ。包装の種類に合わせて専用ラインを設置する必要がないため省スペースも実現する。

パッケージを保持し、左右の幅を自在に変更できるフジキカイの「リニア搬送包装システム」

従来製品はモデルチェンジするごとに「“かゆいところに手が届く”よう、時代に合わせて進化させている」(生田社長)という。

主力のピロー包装機械は、包装フィルムロールを機械に設置する作業が必要だが、女性でも楽に載せ替えができるようにモデルチェンジの際に設置位置を下げた。食品向けが多いこともあり、生田社長は「掃除がしやすいような傾斜を付けたり、コンベヤーを外しやすくしたり顧客が仕方ないと思いながら使っている部分にメスを入れる」と意気込む。

ハナガタ フィルム段取り、製品サイズ識別・調節

シュリンク(熱収縮)包装機が主力のハナガタ(富山市、花方淳社長)は、従来機への機能追加で顧客の課題解決支援に注力する。汎用性の高いL型自動包装機械に、新たに「自動段替え機能」を追加した。

ボックスの中でバーコードを読み取り、製品サイズに合わせて自動調節するハナガタの「自動段替え機能」

従来は、包装する製品のサイズを変えるたびに作業者が包装フィルムの段取りを変える必要があった。新機能では、コンベヤーの途中でバーコードを読み取って製品を識別し、製品サイズに合わせて機械が自動で段取りを調節してくれる。また、スマートフォンなどの端末から遠隔操作できる機能も追加し、自動停止の通知や、起動・停止、生産数をモニタリングできるようになった。

ゼネラルパッカー 袋封止を自動化、熟練度問わず品質保つ

自動包装機械メーカーのゼネラルパッカーは、パッケージの供給や包装後の搬送工程などまでを自動化したり、作業者の熟練度を問わない仕組みを従来機に追加したりしている。

ゼネラルパッカーは袋を封止する前に四隅を抑えて位置決めをする仕組みを開発

並べられた袋をつかんで封止する給袋式自動包装機では、乱雑に並べてしまうとそのまま封止されてしまうため、袋を並べる作業者の熟練度が封止の品質に影響していた。人手確保が難しく、人の入れ替わりも激しい生産現場の課題解決のため、その工程を自動化できる仕組みを開発。吸着した袋を自動で四方からそろえて位置決めする工程を挟むことで、誰が作業しても封止の品質を保つことができるようになった。

また、「フードロスの観点から需要が増えている」(本社営業部の徳成達浩次長)製品もある。酸素濃度分析計「GPX1500」は、レーザー吸収分光法を用いて非破壊で残存酸素量を測定できる。針を刺す必要がないため検査した製品も廃棄する必要がない上に、「賞味期限を延ばすために製品にガスを充填する顧客も増えており、提案に力を入れている」(同)という。