高校バスケットボールで昨年12月に日本一に輝いた福岡第一に浮上の兆しが見えてきた。5月12日に行われた福岡県高校総体中部ブロック予選決勝で福岡大大濠に敗れたが、63―64という激戦だった。井手口孝監督(60)は「ゾーンでごまかしながらの試合でした」と厳しかったものの、八田滉仁主将(3年)ら主力をけがで欠く中、宮本聡(2年)と耀(同)の「宮本ツインズ」が攻守でけん引した。

 最後までコートに立っていたからこそ味わう感情だった。第4クオーター(Q)残り20秒。福岡第一のタイムアウト明けから聡が狙ったジャンプシュートはリングに嫌われ、直後の耀のドライブは福岡大大濠の渡辺伶音(3年)に阻まれた。聡は「あの場面で決めきれないといけない」と悔やむと、耀も「前しか見ていなくて突っ込んでしまった。勝たせられなかったのは自分たちの責任」と悔しさをにじませた。

 2人の出場時間はともに39分43秒。ほぼフル出場という起用は高校入学後、初めてだった。主将の八田と崎浜秀寿(2年)の先発ガードコンビがけがなどで不在。井手口監督からは前日に「フル出場もあるからペース配分を考えて」と伝えられていた。ポイントガードの聡は6得点に加え、リバウンドとアシストで貢献。シューティングガードの耀は3点シュート4本を含む22得点。ディフェンスでは前からではなく、ハーフコートで運動量を生かすスタイルで相手ガード陣に重圧をかけ続けた。「最後まで足は動いていました」。第3Q序盤には最大9点までリードを広げ、起用に応えた。

■運動量生かした2―3ゾーンで60点台に抑える

 先発ガード陣に加えて、3年生の留学生サー・シェッハも欠場し、ベンチ入りした留学生は1、2年生。身長170センチのツインズの低さと留学生の経験不足を2―3ゾーンで補い、今年初めてライバルを60点台に抑えた。井手口監督は「1点差でも100点差でも負けは負け。マンツーマン守備ができなかったので、ゾーン守備でごまかしました。大濠さんも準備する時間があまりなかったから、得点が伸びなかったのかな」と本来の戦術ではないと強調しながら、「聡と耀が大濠さん相手に得点できたのはよかったね」と収穫を口にした。

 ツインズの目に焼き付いているのは第4Q残り3分、4点リードの場面で福岡大大濠の湧川裕斗主将が3ポイントラインの1メートル後方から放って沈めた「ディープスリー」。流れを変える1本を許し、直後に逆転された。マークしていた聡は「警戒していたのですが、打たれた瞬間に『ヤバい、入った』と思いました。あれを決めきるのがエースなんだと」と肩を落とした。

 新チーム発足後、ライバル福岡大大濠に4月の飯塚カップ2024まで4連敗中だったが、遠かったライバルの背中がようやく見えてきた。6月の県大会では今年6度目の対戦が濃厚。初勝利を挙げて地元福岡が舞台となる全国総体に弾みをつける。