チャンピオンズリーグ(CL)通算出場試合数を、イケル・カシージャスと並ぶ150の大台に到達し、歴代1位を保持するシャビの151まで、あと1試合に迫ったトーマス・ミュラーがその記録を達成したレアル・マドリー戦後、つぶやいた。

「これがレアル・マドリーだ。誰もが知っているし、見てきた。(マンチェスター・)シティ戦でも2度あった。ここ数年、ずっとそうだ。彼らと対戦する時は1分1秒細心の注意を払わなければならない」

 そして一息ついてインタビューゾーンの左側に視線を送ると、「トニ・クロースが笑っているだろ。彼も分かっている。いつも同じことの繰り返しであることをね」と付け加えた。

 トーマス・トゥヘルもかつてミュラーが言う誰もが知っているマドリーの強さを目の当たりにした当事者の1人だ。21−22シーズン、チェルシー監督時代に敵将としてその餌食になった。彼は、試合前にすでに警鐘を鳴らしていた。

「マドリーのゴールやチャンスを生み出すシーンを見るとある現象に気づかされる。10秒間、巻き戻すと、その兆候が見られないんだ。ゴールの予感がしない。すべてコントロールしていると思っても、5秒早送りすれば、突然ゴール前に顔を出している」
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 今シーズンのマドリーは、CLでスコアボードの狭い余白を悠々と動いている。目下CLで4試合連続引き分け中だが、データサイト「Opta」によれば、これはヨーロッパのコンペティションにおいてクラブ史上最長の記録だ。レギュラータイムで勝利を挙げたのは、ラウンド16ファーストレグのライプツィヒ戦のみ(1−0)。そんな中でも、決勝進出まであと1勝に迫っている。特筆すべきは、ビハインドを負った時間帯での抵抗力だ。

 バイエルンのホームで行われたファーストレグでも、その一撃で状況をひっくり返すことができるという確信に裏打ちされた抵抗力を存分に発揮した。

「勝てなければ、負けないようにする。それがマドリーの考え方だ」

 ロドリゴは試合後、こう分析すると、さらに続けた。「チャンピオンズリーグの試合だからね。これがマドリーが慣れ親しんだ展開だ。相手に死んだと思わせた瞬間、最も危険な存在になる。今日もそれが起きた。苦しい展開に追い込まれていた時間帯に(2−2の)同点に追いついた。いつもこんな感じだ」 

 一方、コンラート・ライマーは諦め口調で振り返った。「これがマドリーの典型的なパターンだ。僕たちは分かっていた。試合をスローダウンさせ、ここぞという時にスペースを突いてくる」

 その抵抗力は、時に苦し紛れの産物のようにも見えるが、その強みを活かしてマドリーはここまでコンペティションから脱落した時間帯はほとんどない。決勝トーナメント以降、480分間(5試合+シティ戦第セカンドレグの延長30分)プレーした中で、ビハインドを負った時間帯は44分と全体の9%に過ぎない。

 準々決勝のシティとのファーストレグで、ベルナルド・シウバのゴールで先制を許し、同点に追いつくまで、ヨシュコ・グバルディオルのゴールで2−3と再び突き放され、タイスコアに戻すまでそれぞれ10分、8分しか必要としなかった。バイエルンとのファーストレグでは、ハリー・ケインにPKを決められ逆転を許してからヴィニシウスが同点ゴールを決めるまで26分が経過していた。マドリーがビハインドを負ったのは、この3回だけだ。一方、決勝トーナメント以降、リードを奪った時間帯を加算すると、190分に達する。
 
 カルロ・アンチェロッティ監督は「ブロックを下げて戦う形を望んでいなかったが、相手にブロックを下げさせられた。しかもアグレッシブさに欠け、カバーリングも遅れ気味だった。私はそれが気に入らない。守備をしなければならないときは、シティ戦(のセカンドレグ)で120分間やり遂げたように、もっとアグレッシブさを持って行わなければならない。その点、今日の我々の守備は軽かった」とバイエルン戦後、苦言を呈した。

 しかし、だからこそバイエルンにはいつも以上にフラストレーションがたまる展開だったといえる。バイエルンは直近8試合で、マドリーに勝てていない。
 
「このコンペティションでは、負けないことが重要だ。そして僕たちはまだ1回も負けていない」。ヴィニシウスはこう胸を張ると、早くもセカンドレグを見据えた。「次はホームゲームだ。魔法の夜が待っている」

 その自信に満ちた言葉は、2シーズン前の準決勝シティ戦のファーストレグで自らPKを決めて1点のビハインドに持ち込んだ後(3−4)、セカンドレグに向けて「次は(サンティアゴ・)ベルナベウだ。魔法を引き起こして勝利してみせるよ」とカリム・ベンゼマが口にした勝利宣言を思い起させた。

文●ダビド・アルバレス(エル・パイス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸

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