2022年のドラマ『やんごとなき一族』や、2023年の大河ドラマ『どうする家康』に出演。その美貌と演技で注目を浴びた、松本若菜さん。

長い下積み時代を経た彼女が、いま“女優”として思うこととは?

39歳とは思えない美肌をキープするための気になる美容習慣や、今年の抱負を交えて聞いてみた!


霧が晴れるまで10年。2023年、大躍進を見せた“遅咲き女優”の底力


2022年のドラマ『やんごとなき一族』での怪演や2023年の大河ドラマ『どうする家康』での好演が記憶に新しい松本若菜さん。

作品では美貌より没入した演技が際立つからか、実際の松本さんは一層美しく華やかだった。

39歳、あまりに艶のある肌の秘訣を聞くと、「毎日の朝晩のパック。高くない大容量パックですよ」と、袋を開けるリアルな仕草を添えて話す。

食べる撮影でも飾らぬ素顔を見せ、「本当に美味しかったので完食しちゃいました(笑)」と微笑む。

料理に関するコメントが的確だが、実は調理科のある高校出身で調理師免許をもち、いまも自炊が当たり前の生活を送る。

今年でデビュー16年目。34歳までカフェの厨房でバイトをしていた松本さんの昨年からのブレークは、よく“遅咲き”と表される。

始まりも少し遅めで、女優を目指して上京したのは22歳の時。高校1年の頃に地元鳥取でスカウトを受けた当時は断り、数年後の決心だった。

「最初は怖くて1歩が踏み出せなくて。高校を卒業して夢がないまま会社で働く日々の中で、声をかけてもらったことが心に残っていました。

自分にしかできない仕事ってなんだろうと考えた時、いまなら勢いでいけると、お断りした事務所に連絡したんです。

そうしたら覚えていてくれて、1泊2日で東京に見学へ行き、その間に住むアパートも決めて、あとは保証人となる親に押印をもらうところまで進めちゃったんです。

うちは厳しい家庭で何も知らなかった親は、“何言ってんの!”となり、土下座に近い感じでお願いして東京に出てきました」


「バイトを掛け持ちした過去も愛し、いま、“職業・女優”と言い切れます」


それからはオーディションを受けながらバイトを掛け持ちする日々。



「鰻屋さん、お鮨屋さん、沖縄料理屋さん、お蕎麦屋さん(省略)」と指を折って数えたら7軒。

そんな中で10年経った32歳の時に転機が訪れる。映画『愚行録』での演技が高く評価され、ヨコハマ映画祭で助演女優賞を受賞したのだ。

「ずっと自信がなくて、将来が全く見えなかった恐怖もあったし、どうしたらいいか分からなくて凄くもがいていた時期。そういう時期も肯定してくれた賞で、自分がやってきたことが間違ってなかったと思える出来事でした。

助演女優賞をいただいたことで、だったら助演を極めたい、作品に松本若菜の名前があったら観たいと思われる俳優になりたいと、考え方も変わっていきました。

いままでは自分の役のことしか頭になかったのが、作品全体を考えるようにもなりました。

自分が助演の時、いかに主演を引き立てられるか、自分の居場所を見つけたからこそ、“居方”を意識するようになったんです。

いま思えば、あの時が転換期というか、少しずつ霧が晴れかけた瞬間だったなと思います」

とはいえ一筋縄ではいかない世界。自分の意識は変わっても、「そのあとも3〜4年はもがいていました」と松本さん。

前述のとおり受賞後2年はアルバイトも続け、「本当に芝居を辞めようと思ったのは1回だけ」という出来事もあった。

「具体的には言えないんですけど、もう無理だと限界を感じた時があって、その時だけ、向いてないかもと思ったんですよね。

それで唯一母にだけ、『私、この仕事が終わったら、もう実家に帰る』と言ったんです。そしたら、母は『分かった』しか言わなくて、理由も聞かない。

いまになってこそ思うんですけど、たぶん母は、私が限界でも辞めないのを分かっていて、逃げ道を作ってくれたんだろうなと。

上京する時も大反対されたのに頑固に行くと言って出て、そう言わないとこの子……と思ってくれたんでしょうね。“分かった”しか言われなかったけど、その言葉にとても救われました」


「胸を張って“女優です”と言えるし、毎日演じることが楽しいです」


母のひと言が効いて俳優として踏ん張ると、着実に役は増えていった。

それでも、俯瞰して自分の仕事を見ると、ある課題に気がつく。



「松本若菜だって覚えてもらえないんですよ。私、個性がないから。お芝居も声も個性がなくて、あのドラマに出ていた人と一致されない。SNSでも、見返して気づきましたという感じ。

ありがたいことにゲストで出させてもらうドラマが増えてきて、そしたら今度はそこがネックになり、自分の個性は何だろうと次のステップに行けずに、ずっともがいていましたね」

突破口は、2022年の『やんごとなき一族』でのヒロインをいじめる兄嫁役。クセの強さと百面相のごとく変わる表情は“松本劇場”と呼ばれ、自分の姓がつくブームを起こした。

「一切無理せず演じていました。私、普段から表情がうるさいと言われるんです(笑)。表情豊かな役だったので、すんなりと入ったのかもしれません。

先日ドラマを観てくださったある女優さんに、『一歩間違えると寒くなっちゃうのが、松本さんのお芝居だと、あれが凄く面白くなるよね』と言ってもらえたのが本当に嬉しかった。

それは、こうしたら面白くなるかなとか、こういう人いたら嫌だなとか、自分の中で遊びながら演じさせてもらった結果、生まれた表現。

主演の土屋太鳳ちゃんや松下洸平くん、監督さんがそれを許してくれて、本気の遊びに本気で乗っかってくれたおかげです」

結果、「東京ドラマアウォード2022」で松本さんは助演女優賞に輝く。唯一無二の個性を面白がり、松本さんありきで書かれる脚本も生まれ始めた。

「閉じ込めていたものの蓋を開けたら、蓋どころかもう中身が全部爆発したみたいな感覚でした(笑)。胸を張って“女優です”と言えるし、毎日演じることが楽しいです」

確かな自信をつけて迎えた2023年はさらに勢いを増し、かつてなく忙しい年となった。

同時期に役を掛けもつことの大変さを感じながらも、「ずっとやりたかったこの仕事。スケジュールが埋まることが夢だったから、それが叶って本当にありがたいです」と、多忙な日々を生き生きと過ごす。

そして、2024年への抱負は、「前からですけど、毎年ちょっとずつでもいいから1歩ずつ前へ進みたいです」と、堅実だ。

上京当初から積み重ねる1歩1歩で、上手くいかない時期もくぐり抜けてきたからこそ、「前へ」という言葉に説得力がある。

そして、魅力と才能を開花させている女優の姿は、常に“いま”がベストだという頼もしさを漂わせていた。


■プロフィール
松本若菜 1984年生まれ、鳥取県出身。2007年に女優デビュー。2022年には『復讐の未亡人』(テレビ東京)でドラマ初主演を果たす。2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』に出演。2024年1月スタートのドラマ『君が心をくれたから』(フジテレビ系・毎週月曜21:00〜)に出演

■衣装
ドレス 79,200円〈デパリエ/デパリエ 伊勢丹新宿店 TEL:03-3351-0005〉、コート 143,000円〈Sov./フィルム TEL:03-5413-4141〉、ネックレス 528,000円、ブレスレット 1,243,000円、リング(マザーオブパール)385,000円、リング(ペリドッド)616,000円、ピアス 660,000円〈すべてポメラート/ポメラートクラインアントサービス TEL:0120-926-035〉


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東京カレンダー最新号では、松本若菜さんのインタビュー全文をお読みいただけます。
東カレに語ってくれた、松本さんのご褒美飯とは?

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