大阪阿部野橋の駅名は、現在のJR線が通る堀切にかかる阿倍野橋に由来する。所在地は大阪市阿倍野区阿倍野筋で、「あべの」の漢字の表記は駅名と地名で異なっている。1923年に南大阪線の前身、大阪鉄道が開業した当初は「大阪天王寺」だったが、間もなく現在の駅名に改称した。

近年、「あべの」の知名度を全国的に上げたのが超高層ビル「あべのハルカス」だ。「あべのハルカス近鉄本店」「大阪マリオット都ホテル」といった近鉄グループ運営の百貨店・ホテルが入る複合施設で高さは300m。東京に「麻布台ヒルズ森JPタワー」(330m)が誕生して日本一の座は譲ったが、大阪のランドマークとしての地位はゆるぎない。あべのハルカスは2024年3月に開業10周年を迎えた。

あべのハルカスとJR天王寺駅 「あべのハルカス」の足元が大阪阿部野橋駅。左はJRの天王寺駅(記者撮影)

「遅延や乗客のトラブルは少ない」

大阪阿部野橋駅の新澤数巳駅長は「天王寺の地名が有名なので、いまでも『阿部野橋駅はどこ?』とここで聞かれることはあります」と明かす。新澤駅長は吉野線沿線の出身。高校時代は南大阪線に乗って映画や買い物に出かけていたという。1984年に入社して最初に配属された駅も大阪阿部野橋。車掌や運転士、駅の助役、列車区長として南大阪線系統の経験が豊富だ。ほかに西大寺の教習所で330人ほどの運転士の養成に携わった。

新澤駅長は「乗降人員は近鉄で1番だが案外、遅延や乗客のトラブルは少ない」という。南大阪線は待避駅がいくつも設けられているほか、他線の遅れの影響も受けにくい。また、夜は郊外へ向かう利用が中心になるため早い時間帯に乗車する人が多い。谷口英志副駅長も「終着駅でよくあるように寝過ごして『何やここ、どこやねん』となってしまうケースはあまりない」と語る。

近鉄大阪阿部野橋駅 駅長と副駅長 大阪阿部野橋駅の新澤数巳駅長(左)と谷口英志副駅長。右は吉野行きの観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」(記者撮影)