GRヤリスはWRCを筆頭にラリーフィールドが開発の主戦場だ。発売後も継続的に進化させパーツや車両全体の成熟度を高めている。GRヤリスのチーフエンジニア(開発責任者)である齋藤尚彦さんは、「市販モデルとラリーモデルは関係が密接です。2023年9月の“S耐もてぎ”で、GRヤリスの8速ATモデル(プロトタイプ)を出走させましたが、進化型GRヤリスに設定したDATには、そこでの実戦経験を織り込んでいます。耐久信頼性が結果を大きく左右するレース環境でも使えるタフなATがDATです。この先も実戦で鍛えることをやめず、さらなる進化をGRヤリスでは目指します」と語る。

サーキットで従来型と進化型のGRヤリスに試乗

黒いボディカラーの車両が従来型、白いボディカラーの車両が進化型のGRヤリス 黒いボディカラーの車両が従来型、白いボディカラーの車両が進化型のGRヤリス(写真:トヨタ自動車)

今回は、進化型第1章ともいうべきGRヤリス(8速DATと6速MT)に雨のサーキットで試乗。比較用として従来型GRヤリスの6速MTモデルが用意されていた。

サーキット試乗で雨天とは条件が悪そうだが、雨の試乗も嫌いじゃない。しかも試乗当日の外気温は+1度と、いまにも雪に変わりそうな寒さだ。わかりやすく滑りやすい路面だが、車両の限界特性を低い車速域から安全に確認できる絶好のチャンスでもある。

まずは従来型の6速MT(456万円)に乗りコースイン。すでに様々な路面や道路状況で従来型には試乗してきたが、一体感の高いハンドリング性能や加減速性能はやはり心地よい。一方、滑りやすい路面で前荷重を行い、左右に大きくステアリングを切り込みアクセルペダルを踏み込んでいくと、そのままクルッと後輪が滑り出してしまうような力強い旋回力を感じる。よって強い加減速を行った際や、大きく切り込んだステアリング操舵後のアクセルワークには慎重さが求められる。