アクアライン全体の交通量は、実験の前年同時期と比べて増加したが、値上げをした休日昼間の交通量は前後の時間帯に分散。渋滞による最大損失時間が、土曜日で約31%、日曜日で約21%減少となった分析が出されている。

観光地や行楽地への利用客で混雑しがちな東京湾アクアライン(筆者撮影) 観光地や行楽地への利用客で混雑しがちな東京湾アクアライン(筆者撮影)

また、夜の料金を値下げしたことで、千葉県の観光施設などの滞在時間が増えたといった総括もなされている。一定の効果は、あったと言えるだろう。この実験は、今年度も継続されている。

こうしたことを受けて、渋滞の激しい区間などで同様の価格変動制を導入しようというのが、今回の政府からの提案である。

これで高速道路の渋滞が本当に緩和されるなら、利用者にとっても悪くない施策である。しかし、現在のところ、筆者の周囲の声やインターネットの反響などを見ると、あまり評判が芳しいとは言いがたい。

時間をずらせない人には値上がりになる

まず、ベースに「日本の高速道路通行料が諸外国に比べて高い」ことがある。欧米などの物価高や円安で、日本の物価は相対的に安くなっているが、こと高速料金に関しては今でも「安い」という感覚は持たれていないであろう。

さらに、いずれ無償になると説明されていた高速道路の通行料は、2023年5月の法改正により「事実上2115年まで有料のまま」ということになり、多くの利用者を落胆させた。2115年という途方もなく先の年限が、事実上「無料化の撤回」と受け止められたからである。

東名高速道路の大和トンネルは平日でも混雑が多い(筆者撮影) 東名高速道路の大和トンネルは平日でも混雑が多い(筆者撮影)

また、高速道路の利用者は、「混んでいるから時間をずらせる」人ばかりではない。もし混雑時の料金が上がれば、時間をずらせない人にとっては値上がりになってしまう。さらに、業務用の大型車などには、労働時間に上限などを課す「2024年問題」もある。

これまででさえさまざまな時間的制約が課されていたのに、もし料金が細かく時間で区切られることになれば、少しでも安く走行するためには、今まで以上に時間調整を行わざるをえなくなる。これでは、「働き方改革」に逆行しかねない。