――作詞をするときに、新しい発想が生まれるのはどういうところからですか。

今の時代に「電話のダイヤル回して」という歌詞は伝わらないから時代は意識するけれど、今っぽい新しい言葉を入れたらいいかというと、そうじゃないと思う。流行り言葉にこだわる必要はない。

でも、時代が変わっても人の心の中ってそう大きく変わらない。定番は、初恋なのか片思いなのか、友情なのか家族愛なのか、とか。

人がSNSに書きたいことって、だいたい「眠たい」

僕は毎日思うことがあるんです。人がSNSに書きたいことって、だいたい「眠たい」か「おなか減った」、あとは「時間がない」ぐらいじゃないでしょうか。書こうかなと思ってやめたり、たまに実際に書いちゃったりするけど、言いたいことってそんなものなんですよね。

歌詞の基にしているのは、そんな普通の感覚。そう大したテーマではないんですよ。あとは、テーマを初恋にするか家族にするかという違いや、主人公が曲ごとに変わるというぐらいのことです。

歌詞をよく読んでもらえたら多くの人が気づくと思うけど、どの曲でも僕は人間の本質のことしか言ってない。

表現の仕方は曲ごとに変わるけど、中身は一緒。それをちょっとうまくやれた時には「どうしてそんなに女の子の気持ちがわかるんですか」と言ってもらえる。「シングルベッド」のときは、「これは僕のテーマ曲だ」って誰もが思ってくれた。日本中のカラオケでみんなが歌ってくれた。

お茶の間はディテールが気になる

――「シングルベッド」でいうと、狭い部屋に置かれたシングルベッドという具体的なイメージ、そうしたディテールへの共感や親近感が大きいのでしょうか。

歌の聴き手はそう思いがちだけれど、ディテールじゃない。

ディテールは、作り手からするとむしろ簡単なんです。例えばラーメンでいうと、核になるのは出汁や麺。ディテールはナルトとかコーンとかバターとか。で、こういうときに、お茶の間はディテールが気になる。それは僕たちプロが、ディテールに目がいくように作っているからなんです。

それがプロの仕業というか、テクニックです。だから「シングルベッド」は「ベッド」という言葉に目がいくようになっているし、そこから想起される情景があるだろうと思う。

けれど重要なのは、歌詞の本質が何かということなんです。