2011年の東日本大震災による津波で死者13人、行方不明者2人が出た旭市。津波被害を受けた地元の旭農業高校では、県北部林業事務所と契約を結び、約0・41ヘクタールの松林を管理している。8日には、同校の全校生徒240人が、矢指ケ浦海水浴場に近い松林で下草刈りやゴミ拾いをした。3・11の記憶を伝える授業でもあるという。

 作業開始前、同校の池辺憲彦校長は「日ごろの授業よりも大事なことを今日はします」とあいさつ。震災を忘れないこと、命を守ること、今からできることを行う大事さを説いた。同校の在校生は、震災当時はまだ就学前だった世代で、「停電、断水をした暮らし」がかすかに記憶に残っているくらいだ。

 下草刈りは毎年の行事で、2019年から4年間、同校の先輩が植え続けた松林での作業だ。約50センチから1メートル余に育っているクロマツの苗がこのまま順調に育つよう、周囲の草刈りは欠かせない作業となっている。

 松林はノイバラが伸びていたり、苗より背が高い草が生えていたり。生徒らは使い慣れていない鎌を手に、草刈りをした。「トゲが刺さった」「鎌で刈るより引っこ抜いた方が速い」などと、にぎやかに作業は進んだ。

 このエリアにある海岸県有保安林を管理する千葉県北部林業事務所によると、旭市から一宮町にまたがる九十九里海岸沿いには約620ヘクタールある。戦前から砂防林として整備してきた歴史があるが、マツクイムシの被害や、地下水位の高い場所での根腐れなど、植え替え作業を進める中、震災の津波被害を受けたという。

 東日本大震災を受け、津波で倒れたり、浸水して立ち枯れたりと、16地区の約31ヘクタールで被害が出た。だが、保安林の効果によって津波の威力が弱まり、漂流物をせき止めて二次的災害を軽減・防止した効果が確認されているという。

 海に近い部分など約173ヘクタールは植え直しが終わったものの、その内側に植栽予定の広葉樹などを含めた樹林帯は、最も海に近く、飛砂を防ぐクロマツ林が育っていないため、本格的な造林に着手できていない箇所があるという。(根岸敦生)