教会のコミュニティーは「神様の家族」

もう一つ、アテがあるそうです。それは、明子さんがここ20年通っているキリスト教会です。新興宗教ではなく、伝統的な、由緒ただしいプロテスタント教会です。子どもの頃に日曜学校に通っていた明子さんですが、洗礼と献金への疑問を越えられずに一度は教会を離れました。ところが仕事で、取材の一環でいまの教会と出会い、神様と再会。信仰を持ちました。いまは、神様から与えられたものを神様に「返金」することが献金だと思い、「喜んで捧げています」。

教会には、信頼できる牧師や仲間の信者たちがいます。コミュニティーがあります。この教会から遠いところに住みたくありません。そこで、教会に「親しい人たちと一緒に入る老人ホームを作って」と冗談交じりに言っています。老人ホームを作るのは無理でも、信者の仲間たちとルームシェアならできそうです。少なくとも、教会が身元保証人になってくれれば、賃貸物件が借りられないことはないだろうと、モトザワも予想します(孤独死を防ぐ意味でも、教会のような組織は頼りになりそうです)。実際、病気で入院する時の付き添いは、教会がしてくれます。

教会のコミュニティーは「神様の家族」だと、明子さんは言います。本当に困った時には教会が助けてくれます。例えば、教会に3年以上所属している信者には、教会がお金を貸してくれるのです。明子さんも実際、旅行費用を借りたことがあります。知人の派遣社員の女性は、がんで入院・手術した時、まとまったお金が用意できずに、教会に立て替えてもらいました。もちろん返済はしますが、営利事業ではないので利息はゼロです。


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その教会に収入の1割相当分を献金する、という「什一返金」を、明子さんは続けています。「収入は神様から与えられているものなので、旧約聖書に則って、収入の1割を神様にお返しする」という考えによるそうです。お返しすることで、さらに神様が祝福してくださる、という約束があるのだと、明子さんは説明します。

仕事を引退したら、教会でのボランティア活動に精を出すつもりです。今も、教会の奉仕活動に参加したり、教会主催の子ども食堂の手伝いをしたりしています。教会に来る子どもたちはみんな可愛い。もっと関わりたいと、参考書を買って、独学で保母の資格まで取得しました。「教会で幼稚園を作るのなら、働けます」。この子どもたちが、将来、自分たちの面倒を見てくれるかもしれません。

明子さんは「聖書に書いてある通り、ちゃんと神様は祝福してくれるはず」と、信じています。教会は、明子さんにとっては、楽しみであり、心の支えであり、癒しです。だから、老後についても、きっと大丈夫、何とかなるさ、と思えるのだそうです。信仰が、明子さんを精神的に支えていることは間違いありません。