繁殖場から保護された11歳のオスのダップル。

保護団体・スリール〜犬達の幸せ探し〜(以下、スリール)が迎え入れた日は晴天でしたが、ダップルの表情はどんよりと暗く、その目には涙がつたっていました。

胸を痛めるスリール関係者。しかし悲しんでばかりいても、ダップルの未来が幸せなものになるわけではありません。お日さま(SUN)のように明るい晩年を願い、「サン」と名付けました。

11年間「道具」としてしか扱われていなかった

サンの体には重篤な持病はなかったものの、健康とは言えず、体はガリガリで歯石がビッシリ付着していました。11年間、繁殖場で「道具」としてしか扱われなかったことを考えると、憤りと悲しさでいっぱいになります。

サンの世話をすることになった預かりボランティアさんは「ここまでの辛い犬生を送ってきた分、サンの晩年はとびきりの幸せな日々にしてあげたい」と、愛情をたっぷり注ぎ、献身的な世話を続けることを胸に刻みました。

サンの表情と尻尾に少しずつ変化が…

サンの悲しそうな顔はなかなか変わりませんでした。その表情を見るたびに涙が出そうになる預かりボランティアさんでしたが、グッと堪えて、笑顔で明るく接し続けました。

数日たつと、変化が現れました。日に日にサンの表情が柔らかくなり尻尾が上を向くように。そして小さく尻尾の先を振り、初めてサンがぎこちなく笑顔を浮かべてくれました。

預かりボランティアさんは小躍りするほど喜び、涙が出そうになりました。でも、サンの前で涙を見せてはなりません。ここでもサンをいっぱい褒め、さらに一歩幸せへと近づけるよう応援してあげました。

「お日様のように明るく幸せな犬生」を歩んでほしい

ご飯をいっぱい食べ、保護当初よりはふっくらしたサン。去勢手術を終え、歯石もきれいに除去し、少しずつ健康を取り戻しています。

まだまだ表情は固いものの、預かりボランティアさんがご飯のお皿を手にすると、うれしそうに顔をあげて尻尾も振るようになり、心を開いてくれるようになりました。

そして、保護当初に常に浮かんでいたサンの涙が止まりました。

そして「迎え入れたい」という里親希望者が現れました。「これまで流していた涙の分、全部笑顔に変えてあげたい」と、サンと向き合い続けた預かりボランティアさんの願いが成就しました。その名の通りの「お日様のように明るい幸せな犬生」が1日も長く続いてくれると良いですね。

(まいどなニュース特約・松田 義人)