道端で子猫が鳴いていたら、誰もが反応して、一時保護まで考えてしまう人もいるかもしれない。ところが、それが子猫ではなく“たぬき”だったら…? 見た目はソックリな猫とたぬきを例にあげて「誤認保護」を訴えるX(旧Twitter)の投稿が3.4万いいね、476.7万表示の話題となっている。「この時期、側溝の中で子猫のような鳴き声の黒っぽい動物の赤ちゃんを見つけても 触らずちょっと待って下さい!」と注意喚起した投稿主さんに話を聞いた。

――「こんなに似てるのか…」「難解すぎる」など、たくさんのコメントが寄せられています。あらためてどのように感じますか?

 「たぬきが身近な動物でありながら、実はあまり知られていないということを再認識させられました。正しい知識を広めることで、野生動物に与える影響や問題に対する関心を高めてもらえれば、と思います」

――今回、どのような経緯でこちらのポストを投稿しようと思ったのでしょうか。

 「『たぬきを犬や猫と間違えて保護し、飼っていたけど、噛まれたから野に放した』という話を何度か耳にしたことがあります。しかし、人の手で育てられたたぬきは警戒心が薄く、交通事故に遭う危険性も高いため、野生に戻るのは難しいものです。たぬきも人も不幸にならないためにも、今からたぬきの出産シーズンになりますので、誤って保護しないように注意喚起したいと思い投稿しました」

――実際に、普段たぬきの子どもたちと一緒に過ごされているようですね。「たぬきのお母さん」様が保護したたぬきたちなのでしょうか? 

 「野生動物救護の資格を得て、傷ついた動物の保護活動を行っており、警察の方、動物園関係者、保護団体、一般個人などから日常的に様々な生き物についての相談が寄せられまれます。現在、私共の方で飼育しているたぬきたちは、親の育児放棄により産後すぐに保護され持ち込まれたものを人工哺育で育てました。兄弟の中でも未熟児で虚弱体質であった個体や、骨格形成不全、視力薄弱など、成長過程を見守る中で、野生での生存や仲間との暮らしが難しいと判断した個体を終生飼育することにしました」

――たぬき以外にも、誤認保護されがちな動物はいますか? 

 「イタチやテンは民家の屋根裏に巣を作り出産することがあり、遭遇する確率も高いです。キツネやアナグマの赤ちゃんも、子犬と間違われやすいので注意が必要です」

――野生動物に遭遇した時にやってしまいがちなことや、これまでにあったトラブルなどはありますか?

 「追いかけたり、近づきすぎないようにし、安全な距離を保つことが大切です。また、野生動物に人間の食べ物を与えることは、彼らの行動を変えたり、病気を拡散したりする可能性がありますのでエサを与えない様にして下さい」

――誤って誤認保護してしまったり、野生動物に遭遇してしまったら、どのような行動を取ればよいのでしょうか。

 「傷ついた野生鳥獣を見つけた場合は、野生動物の生態系を守るため、そのままそっとしておいた方が良い場合もあります。もし、誤認保護してしまった場合は地元の動物管理機関、または獣医師に相談してください。許可なく野鳥鳥獣を捕まえたり飼うことは法律で禁止されています」

――たぬきを飼いたいと思う人に考えてほしいことや心構えを教えてください。

 「たぬきを愛玩犬のような感覚で飼育できるのは、生後半年程度の時期まで。その頃を過ぎ性成熟すると、犬とは異なる野生動物独自の本能や習性が強く出てきます。飼育環境が適さなければ、ストレスにより自らの尾を噛みちぎる等の自傷行為をしてしまうことさえあります。大変臆病な性格ゆえ、ささいな気配や匂いに敏感で、突然何かに驚きパニックになると飼い主にさえ見境なく攻撃してくる危険性もあります。たぬきの習性をよく理解していなければ事故や大怪我にもなりかねません」

――たぬきは犬のようにしつけなどは難しいのでしょうか。

 「たぬきはとても臆病で警戒心の強い動物ですので、大きな声を出したり、叱る、叩くなどの行為は、攻撃されたという認識を持たせてしまいやすくなります。さらに攻撃的になったり、信頼関係を損ねる原因となり得ます。

 動物の習性を利用したトレーニングは可能ですが、犬のような服従心はありません。野生動物ですので本能的な行動をとるため、人が都合よくしつけたり抑止することは難しいです。例えばたぬきはタメ糞をする習性がありますので、トイレは同じ場所でしてくれますが、縄張りを主張するため至る所にオシッコをかけマーキングをする行為は止めることはできません。よく私は足や背中の上でマーキングされてしまいますが、愛情表現だと思って受け止めるようにしています(笑)」