私たちは、税の負担だけで、貧しい人たちの痛みを考えがちです。ですが、もらうほうもセットで考えないと、本当の痛みはわからないのです。

貧しい僕と超リッチなみなさんがどちらも1000円払うとします。お金持ちと僕が同じ負担? そう思いますよね。

でも、もし僕が二人の払った2000円を全部もらえるとしたらどうでしょう。僕が得をしているのは、子どもにだってわかる話です。

サービスを受け取る喜びと税の痛み。この両者のバランスを考えなければ、社会全体の公正さなんて語れっこないのです。

国際的にはオーソドックスな考え方

以上の考え方は、国際的にはオーソドックスなものなんです。僕の知人でアメリカのノースウェスタン大学で教えているモニカ・プラサドさんは、ニューヨーク・タイムズで次のように言いました。

「貧困と不平などの削減にもっとも成功した国々は、富裕層に課税し、貧困層に与えることでそれをやりとげたのではない」

まさにそのとおりです。EUに加わっているヨーロッパの国々を見てください。日本の消費税にあたる付加価値税の最低税率は15%です。

ですが、イギリスと旧東欧諸国を除くと、日本よりも税率の高いこれらの国々のほうが、所得格差は小さいです。

なぜそうなるのでしょうか。日本では、消費税は貧しい人の痛みが大きな税だと言われるだけに、意外に聞こえるかもしれません。

実は、お金持ちはほんのひとにぎりしかいません。どんなに多額の税をかけても、入ってくる税収はたかがしれています。

ですから、貧しい人も含めてみんなが払う付加価値税を使い、豊かな税収をいかして幅広い層の暮らしを支えつつ、同時に貧しい人たちの暮らしも守っていく、そういう現実路線がEU加盟国ではとられたのです。

フランス主税局の官僚だったフィリップ・ルビロアさんは、1972年、いまから50年以上前の来日講演で次のように話しています。

「逆進的な税しか採用していない国でもその収入で社会保障を積極的に行っているのであれば、その国全体としては逆進的ではない」

このヨーロッパの常識がなかなか日本には通じないのがしんどいところです。