投資目的なら、リスクを取って大儲けしようという判断はありです。いまがチャンスと思うなら買い時です。居住目的でも、たとえばタワマンが大好きで「タワマンに住むためならリスクを気にしない。一刻も早く手に入れたい」というなら、いま買うのはありです。

しかし、居住目的の人の多くは、マンションという人生最大の買い物をするとき、将来のリスクを考慮して慎重に意思決定するべきです。リスク管理の大原則は「よくわからないものは買わない」こと。この原則に素直に従うなら、「慌てて買う必要はない」という判断になります。

短期と長期、時間軸によってリスクは変わる

ところで、ここまでの「急いで買うべきか、待つべきか」は向こう1〜2年の短期的な話です。しかし、居住目的でマンションを購入するなら、向こう数十年の長期的なリスクを考える必要があります。

「明日のこともわからないのに…」と言われそうですが、マンション購入を検討している人は、次の3つの長期的なリスクを直視する必要があります。

① 人口減少リスク

長期的・理論的には、マンション価格(インフレ除きの実質価格)は実需の大きさで決まり、実需の大きさは30代・40代の人口によって決まります。今後、日本では人口減少が加速し、東京でもついに2025年(来年)から人口減少が始まります。よほどの優良物件を除いて、全国的にマンション価格が下落すると覚悟する必要があります。

② 大規模修繕リスク

マンション販売では、購入のハードルを下げるために修繕積立金を低く設定しているケースが多く、修繕積立金が不足する物件が全体の38.4%に達します(国土交通省、2018年)。昨今の修繕費用の高騰で、この割合は今後さらに上昇するでしょう。修繕積立金の不足で大規模修繕ができないと資産価値が下がり、最終的にマンションは廃墟になります。

③ 地震リスク

2020年1月時点で、M7程度の首都直下地震が今後30年以内に70%の確率で発生するとされていました(地震調査研究推進本部地震調査委員会)。「耐震基準を満たしているから大丈夫」と思っても、建物はどんどん老朽化し、適時適切に修繕が行われるのか不確かです。地震大国の日本でマンションを購入するのは、資産価値うんぬんの以前に「命懸けの選択」と言えます。