こうした長期的なリスクを考えると、マンションを急いで購入するどころか、「買わない」という選択も検討の俎上に載せるべきではないでしょうか。

賃貸なら資産価値が下落するリスクは無関係ですし、賃貸でもタワマン生活を満喫できます。また、ライフステージや家族構成に合わせて住み替えるという点で、賃貸のほうが合理的です。

いまは絶好の売り時?

不動産の「購入か賃貸か」という定番の議論で、購入派はよく「賃貸だと賃貸料を払うだけで、資産として残らない」と主張します。しかし、これは不動産価格が猛スピードで上がり続けた昭和の発想です。

賃貸であっても、ローン返済がない分を別のところに投資すれば、ちゃんと資産は残ります。平成以降、マンションではなくアメリカ株に投資していたほうが、はるかに資産額が増えました。

もちろん、今後マンションと株のどちらが優位かは不明です。ここでは、世界一の投資家であるウォーレン・バフェット(93歳)が自分の遺産をS&P500連動のETFで運用するよう家族に指示しているという事実を紹介しておきましょう。

とすれば逆に、居住目的であれ投資目的であれ、すでにマンションを所有している人にとっては、高値圏でまだ短期・長期のリスクが顕在化していない今は、絶好の売り時と言えるかもしれません。

繰り返しますが、多くの日本人にとってマンションは人生最大の買い物。不動産業者の営業攻勢や短期的な市場動向に惑わされず、リスクを直視して判断したいものです。

著者:日沖 健