ついに日本でも正式発表となったXiaomiのフラグシップスマートフォン「Xiaomi 14 Ultra」は、その卓越したカメラ性能が売りの1つだ。

 Xiaomi 13シリーズに引き続き、あのLeicaとのコラボレーションが実現しており、Leicaによるカメラのチューニングが施されている。また、メインカメラがF1.63の明るさを実現したことより、全てのシステムをまとめて「VARIO-SUMMILUX」の名前を冠した。

 ハードウェアとしては以下の4つのカメラを搭載している。

・メインカメラ:5000万画素 1型センサー(LYT-900)+23mm相当 F1.63-4.0可変絞り(8枚レンズ・反射防止コーティング)

・0.5倍超広角カメラ:5000万画素センサー(IMX858)+12mm相当 F1.8

・3.2倍望遠カメラ:5000万画素センサー(IMX858) +75mm相当 F2.0

・5倍望遠カメラ:5000万画素センサー(IMX858) +120mm相当 F2.5(ペリスコープ)

 画素数は全て5000万画素で統一されており、撮影後の処理がしやすい。また、メインカメラ以外は同一センサーを採用しており、まさにレンズ交換をしているかのような使い心地を実現している点も特徴だ。

 日本では5月16日に512GB/16GBの構成が19万9900円(税込み、以下同)で発売される。さらに後述する「Photography Kit」(別売りオプションで2万2000円、国内における正式な表記は「フォトグラフィーキット」)が付属するという大盤振る舞いだ。

 販売はXiaomi公式オンラインストアの他、au +1 collection取扱店、au Online Shop、IIJ、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、楽天市場、Amazon.co.jpと、通信キャリア、家電量販店、ECサイトで取り扱われる。 ただし、国内発売とはいえおサイフケータイには対応していない。

 今回はそんなXiaomi 14 Ultraを発売前にお借りすることができたので、カメラ機能に注目してレビューしていく。

 結論から先に言えば、街角スナップがメインとなる筆者の場合、RICOH GRやソニーのRX100といった高級コンデジと並べられても、間違いなくXiaomi 14 Ultraを相棒に選ぶだろう。

●Photography Kitでコンデジのような外観に

 Xiaomi 14 Ultraにおける最大の特徴は、カメラ機能を拡張する専用ケース「Photography Kit」の存在だ。Xiaomi 14 Ultraを買うのであれば、絶対にあったほうがいいオプションだと感じた。

 Photography Kitはシャッターボタン、録画ボタン、ダイヤル、拡張バッテリー、ストラップホールなど、カメラを最大限活用するために必要な“多機能グリップ”で、Xiaomi 14 Ultraにに装着することで、コンデジのような見た目と操作感を得られる。

 持ち心地の向上だけでなく、ハードウェアダイヤルによる露光コントロールが実現するなど、細かくカメラの設定を調整したいユーザーにはうれしいものだ。従来はタッチで操作する必要があったパラメーターがダイヤル1つで機敏に動き、非常に直感的な操作感だ。

 「花の華やかさを撮りたいからハイキーにしよう」「陰影を強調する明るさに変えよう」といったシーンで、思い通りキビキビ動くのは実に気持ちがいい。気分はさながらスナップ用コンデジの王者こと、RICOH GRを使っている感覚である。

 一方で、持ち心地には改善の余地も感じる。Xiaomi 14 UltraのPhotography Kitは一般的なカメラグリップと比べると薄くてホールド力は劣るため、片手で持つには少し疲れる。ポケットに入れることを考えるとギリギリの薄さではあるが、カメラ片手に街角スナップというのには、いささか合わない気がした。

 もちろん一般的なスマホと比べればはるかにホールドしやすく、十分ではある。また、スマホとして使うことも考えるとこれが限界の薄さではあるのだろう。

●素直で透明感のある描写が心地よい

 Xiaomi 14 Ultraで撮影を始めると、まず驚くのはその素直な描写だ。

 近頃のスマホカメラはAIによる補正が過剰であることが多く、シャッターを押すだけで映える写真は撮れるが、見たままに撮れない──そんなシーンが多かった。しかし、Xiaomi 14 Ultraは一味違う。

 くすんだところの彩度は低いし暗いところは暗く撮れる。ただ、その素直さや忠実さが、その場の空気感までもを映すようで実に心地よい。撮れた写真を見返すと写真に真摯に向き合ってきたライカの哲学を感じる。

 かといってAI補正が全くなされていないわけではない。23mmと75mmの間ではメインカメラのデジタルズームとなるが、5000万画素の1型イメージセンサーとAI補正によって、どの画角でも品質が大きく落ちることはない。

 Photography Kitの操作感も相まって、思い通りに写真が撮れる体験は唯一無二だろう。筆者は普段、アンダーで撮ってRAW現像で明るさを持ち上げる手法で撮影しているが、スマホでも低ノイズを維持したまま同じ撮影ができることには心底驚いた。大きく加工しても破綻がないのは1型センサーのメリットだ。

 また、デジタルカメラは鮮やかな赤の表現が難しく、色が飽和してしまうことが多い一方で、Xiaomi 14 Ultraはその点もクリアしている。

 若干の色飽和は見受けられるものの、花の立体感はまだ残っている。ここまで撮れるのであれば上等だろう。

●可変絞りと反射防止コーティングが強力なメインカメラ

 Xiaomi 14 Ultraのメインカメラの妙味は、1型イメージセンサーだけでなく可変絞りと反射防止コーティングにある。

 可変絞りは被写界深度の調整に加えて、光芒を出すのにも有効である。Xiaomi 14 Ultraの6枚羽絞りはあえてなのか、12角形を実現する直線で構成されており、少し絞るだけでも光芒が現れ。これは一眼カメラのように表現の幅が広がる。

 メインカメラには反射防止コーティングが施されているのも強力に感じた。通常では逆光で表現が難しいようなシーンでも、高透過率レンズの恩恵でフレアの発生が少なく、ハイコントラストな写りとなる。ここまで透明感がある写りをするスマホはガラスモールドレンズを採用した「Xperia PRO-I」以来ではないだろうか。

 実にクリアに写るのでハイキーの撮影が楽しい。普段スマホでは露光を変えることなどめったにないが、Xiaomi 14 Ultraはパラメーターをいじるカメラ的楽しみ方ができるし、ハードスペックもそれに十分応えてくれる。

●望遠で寄れる楽しさ

 一時期のスマホカメラは寄って撮れるマクロ撮影機能を強化していたが、そのほとんどが超広角マクロ、つまり超広角カメラの短い最短撮影距離を生かしたものであり、「端末の影が入る」「映り込みが多い」といった課題があった。

 一方で、Xiaomi 14 Ultraは75mm望遠カメラの最短撮影距離が10cm、120mmペリスコープ望遠カメラの最短撮影距離が30cmと、テレマクロ撮影が可能だ。“タムキュー”(タムロンの90mmF2.8マクロレンズ、テレマクロの代表格)のような望遠画角のマクロ撮影が可能だ。

 テレマクロは超広角マクロよりもはるかに実用的である。肉眼では見えないような線の1本1本まで強烈にシャープだし、背景ボケもとろけるように写る。動植物撮影をはじめ、テーブルフォトでも活躍間違いなしだろう。

 望遠でダイナミックな構図を撮れるのも楽しい。iPhoneのように望遠だと思ったら、実はメインカメラのデジタルズームだったという事故も起こらない。大体どの距離でもピントが合うのは思った以上にストレスフリーだった。

 もちろんシンプルに望遠カメラとして利用するのも良いだろう。120mmの望遠は大抵のシーンに対応可能だし、5000万画素センサーは240mmでも1250万画素を維持可能である点も頼もしい。

●寄れるだけにオートフォーカスは改善余地あり

 望遠カメラは最短撮影距離が短い分、ピントがシビアになる。

 Xiaomi 14 UltraはPhotography Kitのグリップを利用すると半押しでAFが作動するようになっているが、水族館で撮影していたときに被写体を捉えているのにピントが合わないことがあった。

 とはいえ、厚いアクリル越しかつ暗い環境と意地悪なシーンであったことは事実だ。明るい昼間であれば特に問題には感じなかったし、ピントが決まれば暗くても、望遠でも素晴らしい描写が楽しめる。

●パシャパシャ撮れるスナップ機、もはやコンデジは不要か

 今回、新潟へのショートトリップでXiaomi 14 Ultraを試用してみたが、わずかな期間でXiaomi 14 Ultraのポテンシャルをひしひしと感じる結果となった。なんせ楽しいのである。こんなにもカメラが楽しいスマホは久々であった。

 Xiaomi 14 UltraはPhotography Kitを組み合わせることで「スマホでここまで撮れる」という枠を超え、コンデジ以上に多機能で素晴らしい描写をするカメラになった。

 素直かつ空気感の伝わる画質、4眼全てで均一な品質、ストレスフリーな使い心地が快い。筆者はiPhone、Galaxy、Xperia、Pixel、Leitz Phoneと、さまざまなスマホに触れてきたが、カメラ機能に関しては間違いなくXiaomi 14 Ultraが王者であると思う(少なくとも現時点では)。

 画質だけでなくレスポンスの良さ、シャッターフィーリング、パラメーターの操作感、所有欲、どれをとっても非常にハイクラスであり、カメラ専用機のようにパシャパシャ軽快かつ気持ちよくシャッターを切れる。しかも、Xiaomi 14 Ultraのパワーがあれば、そのままLightroomでレタッチして、モバイルネットワークに乗せてSNSでシェアまでできる。ついでにYouTubeも見れるし、原神も遊べてしまう。

 欠点を考えてみてもほとんど思い付かない。先述の通り、カメラグリップの形状やオートフォーカスは改善してほしいが、そこまで大きな問題ではない。

 バッテリー持ちもカメラグリップに内蔵された追加バッテリーでカメラ以外の用途を織り交ぜても1日中使えた。スペックもSoCにSnapdragon 8 Gen 3を搭載しており、Lightroomのレタッチでも申し分ないパワーだ。

 強いて言えばソフトウェアアップデートがどこまで提供されるかが心配なぐらいだろうか。価格が価格なだけにリセールバリューも気になるところだ。カメラと比べてスマホは陳腐化しやすい。

 Xiaomi 14 Ultraはスマホとしてもコンパクトカメラとしても間違いなくベストバイだ。ぜひ店頭で見つけたら触れてみてほしい。Xiaomi 14 Ultraは、カメラ好きであれば間違いなく気に入る1台だと思う。