なぜ、瞑想をすると、こんなにも心が落ち着くのでしょう。

注意容量を奪うと、ムダな思考がへる

心理学の見地からは、「注意容量」というキーワードを使って説明できます。 

人間の心は 「考えてはいけないと意識するほど、かえって考えてしまう」 性質を持っています。

「グズグズ考えているから動けないんだ、考える前に動け」と言われても難しいのはそのため。

しかし、人間が何かに向けていられる注意の量には限りがあります。

ならば、注意容量を使い切ればいい。そこで、瞑想です。

瞑想によって「今、この瞬間」に意識を向け、注意容量を使い切れば、何も考えずに済みます

瞑想が注意容量を奪う力は強力です。

私はそれをお寺での修行中に実感しました。

雲水の修行は精神的にも肉体的にもハードです。

私は30歳と少々遅めの入門でしたが、多くの雲水さんは20〜25歳くらいの「現代っ子」でした。

修行に耐えかねて「帰りたい」と泣き出す後輩もいました。

それなのに、うつ状態のように心身のエネルギーが枯渇して寝込んでしまう人は、少なくとも私が修行させていただいた3年余りの間は誰もいませんでした。

毎日クタクタになるまで働いて、夜は「布団に入った瞬間に、もう朝」かと思うほど一瞬で深い眠りに落ちる。

これほどの厳しい修行で注意容量を消費していたら、あれこれと思い悩む暇もない、ということなのではないでしょうか。

寝転んでポテチを食べる羊のイラスト 「面倒」などネガティブな考えは注意容量を奪うことで考えなくなる(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)

著者:川野 泰周,恩田 勲