大型トラックの100km/hでの衝突を想定したものも! それならガードレールの内側は安全なのか考えてみた

この記事をまとめると

◾️ガードレールは大きく5種類に分けられる

◾️最大で25トンの車両が100km/hで衝突することを想定したガードレールも存在する

◾️ガードレールの設計基準より激しい事故の場合もあるので注意が必要

ガードレールはどの程度の速さのクルマなら防げるか

 都心で生活していると、年に数回は事故の現場を目撃するでしょう。都心ではなくてもテレビから事故のニュースが流れてくることもちょくちょくあります。

 そんな事故を目撃したりニュースを聞いたりしたときに、想像力が豊かな場合は「もし自分の身に起きてしまったら……」と悪い想像をしてしまい、その後の外出時に車道の側を通行する際に不安を感じたりすることもあるでしょう。

 そうなると、不意の事故に対して自分の身を守ってくれるのはとっさの回避反応の能力と、ガードレールくらいではないでしょうか。

 さすがにその悪い想像は極端かもしれませんが、ガードレールってどれくらいの衝撃に耐えられるのでしょうか? 意外と知らないですよね。ここではあまりスポットが当たることの少ないガードレールについて、掘り下げてみようと思います。

■ガードレールにはいろんな種類がある

 一般的に「ガードレール」と呼んでいる道路脇の白い柵は、道路の管理をおこなっている国土交通省が定めるところによると「車両用防護柵」と「歩行者自転車用防護柵」にわかれているようです。そしてそれぞれに用途別でまた数種類に分かれています。ここでは自動車用防護柵に絞ってその種類と特徴を見ていきましょう。

【車両用防護柵】

 そのほとんどが、クルマがぶつかった際にその衝撃を変形(たわみ)によって受け止めるタイプの防護柵です。クルマによる衝突の多くは浅い角度での進入のため、1点で受け止めるのではなく、たわみながら滑らせるようにクルマの進行方向に逃がして衝撃を分散させる構造のものが多くなっています。そのため、柵の内側への被害を防ぐとともにクルマの乗員の被害も抑える効果もあります。

・ガードレール型

 日本では恐らくこのタイプをもっともよく目にするでしょう。自動車用防護柵を代表するタイプです。

 厚さ2.3〜4.0mmのスチールパネルを緩やかな「W」字の波形断面になるように作られた「ビーム」と呼ばれる横板を支柱で支える構造の防護柵です。支柱は舗装路面に埋め込まれているので交換は手間がかかりそうですが、強度と交換作業性をしっかり考慮されているので、思ったよりも交換は容易だそうです。

 また、切れ目の部分は断面がむき出しのままでは衝突時に危険なため、柵の内側に向けてカールさせる構造になっています。これを「袖ビーム」と呼ぶのは豆知識として覚えておいてください。

 ちなみに「W」断面タイプは一般道路用で、速度が高い高速道路には山がもう1つ多く衝撃吸収能力の高いタイプが使われているようです。

・ガードパイプ型

 ガードレールの波形ビームの代わりに、直径50〜60mmくらいのスチールの丸パイプを2〜3本使ったタイプの防護柵です。

「景観形」とも呼ばれていて、遮蔽面積が少ないことで柵の内側(クルマから見たら外側)の様子が見やすい構造になっています。衝突時の働きはガードレールと同様ですが、コストはこちらの方が少し高く付くようです。

あらゆるケースを想定!

・ボックスビーム型

 こちらは高速道路の中央分離帯などで使われることの多いタイプです。200mm四方くらいの角パイプを125mmくらいの角パイプの支柱で支える構造の防護柵です。

 これもビームと支柱の変形で衝突時の衝撃を緩和する構造です。表裏がなく一列で済むことから、中央分離帯の用途に適しています。また、このタイプでビームに木材を使用したものもあるようです。

・ガイドケーブル型

 ビームの代わりに直径18mmくらいの鋼線ケーブルの張力で衝突の衝撃を受け止めるタイプの防護柵です。

 ワイヤーの張りは両エンドの支柱が受け持ち、途中の支柱は柵の内側への力を受け止めるだけという構造になっています。設置が容易なので、長い区間の使用に適しています。

 ガードパイプ型よりも遮蔽面積が少なくできるので、景観が楽しめる海沿いの道に使われたり、あるいは積雪の重さの影響を受けづらいことから、降雪地域の防護柵として使われることが多いようです。

・橋梁用ビーム型

 このタイプは、橋からの車線逸脱による落下を防ぐ目的のものなので、たわみ性よりも剛性を重視した作りになっています。

 橋のタイプや道路の速度などによっていろいろな構造のものがありますが、標準的なものはガードパイプ型に近い外見のものが多いでしょう。ただし、外見は似ていてもその強度は別物で、ほとんどたわまずに衝撃を受け止める靱性と剛性を持ったパイプが使われています。

 そして、衝突の予防策として、「地覆(ジフク)」と呼ばれる土台部分を道路側に延長した構造にして、クルマの接近を一段階防ぐようになっているところも多くあるようです。

■どれくらいの衝撃に耐えられるの?

 国土交通省では、車両用防護柵の耐衝撃性能にもしっかり基準を設けています。

 道路にはそれぞれ法定速度や制限速度で走行する速度の上限が設けられているので、防護柵もその速度に応じた強度の「種別」で適用を分けています。先述のように防護柵の目的は、柵の内側への被害を防ぐだけでなくクルマの乗員の被害も抑えることも重要なので、適度に変形しなくてはなりません。高速道路用の高強度のものは制限速度が30km/hの道には強度があり過ぎて合わないというわけです。

 ちなみのその基準というのは、総重量25トンの車両が15度の衝突角度で当たった場合に必要な強度とたわみ性をもっているというものです。

「種別」は「想定衝突速度」で26、30、45、50、65、80、100km/h以上と7段階にわけられていて、さらに「路側用」、「分離帯用」、「歩車道境界用」の3分類があり、全部で19種にわけられます。
※高速道路には歩車道境界用は除外

 ただし、これは基準とする状況での強度設定なので、衝突の角度が15度よりも深かったり、多重事故で衝撃の入り方が複雑になったりすると許容限界をオーバーしてしまうことが十分に考えられますので、「ガードレールの内側は安全だ」と安心し切ってしまうのは逆に危険かもしれません。